研究課題
本年度は、まず大腸菌によるRARα/RXRαの発現精製系の確立を行った。コールドショックベクターを用いて低温下で発現誘導を行うことにより、十分量のRARαとRXRαを得ることができた。次に、任意の位置に応答配列を挿入したDNA断片を用いてヌクレオソームを再構成し、RARα/RXRαとの相互作用をゲルシフトによって調べた。その結果、応答配列以外への非特異的な相互作用が顕著にみられ、相互作用の特異性が不十分なことが示唆された。ヌクレオソーム上での応答配列の位置を変えて実験を行ったが、結果は同様であった。以上の結果から、ヌクレオソームとRARα/RXRαについて構造解析に適した安定な複合体を得ることは困難であると判断した。そこで研究計画を変更し、ヌクレオソームではなく、短いDNA断片を用いて複合体を作製し、構造解析を行うことにした。RARα/RXRαと応答配列を含むDNA断片、リガンド、コアクティベーター由来のペプチドを試験管内で混合し、ゲル濾過カラムで精製を行うことにより、安定な複合体を取得することに成功した。得られた複合体を用いて結晶化スクリーニングを行ったが、これまでのところ結晶は得られていない。今後はDNA断片の長さや末端の塩基を変えて、スクリーニング実験を続行する予定である。並行して、DNA結合ドメインと応答配列(DR5)との複合体の結晶化も行った。こちらについては、複数の条件下で結晶が得られ、大型放射光施設SPring8において回折実験を行った。しかし、いずれの結晶においても十分な分解能が得られず、これまで構造決定には至っていない。今後は分解能の向上を目指して、引き続きスクリーニングを行う予定である。
3: やや遅れている
PPARγ/RXRα, RARα/RXRαのいずれも、ヌクレオソームとの安定な複合体を取得することが困難であり、研究計画の変更を余儀なくされた。
これまでに報告されている全長の核内受容体の結晶構造(PPARγ/RXRα. HNF-4α)、RXRαを含むDNA結合ドメインの結晶構造(PPARγ/RXRα, TRα/RXRα, RARα/RXRα)は例外なくPEG/NH4Cl/MgCl2の組み合わせで結晶化している。実際、現在行っているRARα/RXRαのDNA結合ドメインとDR5の複合体も同様の条件下で結晶化した。そこで、PEG/NH4Cl/MgCl2、PEGの分子量、pHを系統的に変化させて、グリッドスクリーニングを行う。また、蛋白質とDNA複合体の結晶化においては、DNAの長さと末端の塩基が最重要なパラメーターである。そこで、長さと末端の塩基が異なる様々なDNA断片を用いて結晶化を行う。また、全長のRARα/RXRαの結晶化については、コアクティベーターではなくコリプレッサーを含む複合体の結晶化も考慮に入れる。
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