研究課題
カルパイン(CAPN)は、限定分解により基質機能を調節するプロテアーゼであり、ヒトには15遺伝子が存在する。CAPN1/2は古くから研究されながら、その普遍性のため機能解明が難航している。一方申請者らは骨格筋特異的に発現するCAPN3、胃腸特異的CAPN8/9などの組織特異的分子種を発見し、発現組織機能と関連づけて生理機能を解析してきた。その結果CAPN3機能不全は筋ジストロフィーの、CAPN8/9遺伝子欠損はストレス性胃出血の原因となることを明らかにした。しかし各分子の生体での作用機序は不明な点が多い。そこで本研究では組織特異的CAPNsに注目し、これらによる特定組織機能の制御分子機構を解析している。特に遺伝子改変マウスとプロテオミクスを基軸とした解析によりCAPNの活性制御機構と標的分子群の解明を目指している。その過程で、ヒト疾患や遺伝子改変マウス表現型を参照し、CAPN不全疾患発症機序へも迫ろうと考えている。今年度は、計画に従って、CAPN3, 6, 8, 9, 11, 12について、遺伝子改変マウスを用いて各関連臓器における機能を解析した。このうち、CAPN8についてはトランスジェニックマウスにおいて新たな表現型を見出した。一方、カルパインの基質特異性を含め、基盤解析技術の開発も行った結果、機械学習などの手法を取り入れることで、今までの生化学的解析だけでは解析できなかったCAPN1-2間の特異性の違いなどを明らかにすることが可能となった。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度も計画に従って、CAPN3, 6, 8, 9, 11, 12について、遺伝子改変マウスを用いて各関連臓器における機能を解析した。計画は順調に進んでおり、さらにいくつかの新たな知見が得られている。そのため、繰り越し申請と共に、来年度以降の計画を若干追加変更した。
上記の通り、研究計画は当初の計画以上に発展して進んでいるため、今後も新しいことにチャレンジしていき、より実りある研究に発展させたい。特に、プロテオミクス関係の解析が進み、多くの興味深いデータが蓄積しつつあるので、これを効率的に解析するシステムを確立し、新しい知見の発見に尽力する所存である。
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