研究課題/領域番号 |
23247030
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研究機関 | 公益財団法人かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
舛本 寛 公益財団法人かずさDNA研究所, ヒトゲノム研究部, 室長 (70229384)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 染色体 / ヘテロクロマチン / セントロメア / 人工染色体 |
研究概要 |
染色体分配機能に関わるセントロメアの反復DNA領域では、CENP-Aを含むセントロメアクロマチンの集合と共にヘテロクロマチンも集合する。本研究ではこれらクロマチンの集合メカニズム解明を目指して以下の解析を進めた。(1) 多様な細胞でのクロマチン形成バランスの解析: 人工染色体前駆体である合成反復DNAをヒトHT1080細胞へ導入すると、CENP-Aクロマチンの集合と共にセントロメア機能を備えた人工染色体の形成が起こるが、HeLaや他の多くの株化細胞では強いヘテロクロマチン(ヒストンH3K9me3修飾等)集合活性が導入DNA上への新規CENP-Aクロマチンの集合やセントロメア機能形成を阻害していることを明らかにした。tetR融合タンパク質を結合させる系を開発して解析を進めた結果、CENP-Aクロマチンの集合には、この強いヘテロクロマチン集合活性と拮抗して一過的にヒストンアセチル化酵素(HAT)活性が働く必要があることを明らかにした(Ohzeki et al EMBOJ, 2012, 特許出願)。(2) セントロメア構造形成とヘテロクロマチン構造形成を調節する因子の検索: かずさcDNAライブラリーを利用して、本来のセントロメアで働くHATと共に、CENP-A集合に関る多様な因子の同定に成功した。また、ヒストンシャペロンのNAP1にはCENP-B の非特異的結合活性を低下させCENP-B boxへの特異的結合を上昇させる活性があることを明らかにした(Tachiwana et al, 2013)。かずさcDNAライブラリーを利用して多様なtetR融合タンパクを作製し、tetO合成反復配列からなる人工染色体へ結合させ、セントロメア形成に対して負に調節する因子と正に調節する因子のスクリーニングを進め,それぞれ多数の調節因子候補を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究は順調に進展しており、その成果の一部は既にいくつかの論文の形にまとまってきている(Ohzeki et al 2012, Bergman et al 2012, Tachiwana et al 2013、他)。特に、Ohzeki et al 2012 の成果は,これまで人工染色体形成が不可能であった細胞でも,その原因を解明して人工染色体をde novoに作り出せる技術として発展させることを可能にするものであり、特許出願した。
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今後の研究の推進方策 |
100種を超えるタンパク質の巨大複合体であるセントロメアとヘテロクロマチンの集合メカニズムには不明な点が多く残されたままであるが、近年セントロメアとヘテロクロマチンの集合バランスは細胞老化や分化段階で大きく変動している可能性が示唆され始めた。そこで、本研究計画では、これらクロマチン集合バランスの調節因子の検索とその因子が実際にゲノム機能の発現にどのように関わるのかについて明らかにすることを最終的な目標にしている。今後の研究では、(1)多様な分化状態にある細胞のセントロメアとヘテロクロマチンの形成バランスの解析を進める。(2)セントロメア構造形成とヘテロクロマチン構造形成をそれぞれ調節する因子の検索を更に進め、これら調節因子を用いてセントロメアとヘテロクロマチンの集合バランスを操作した場合に、染色体上のゲノム機能がどのように影響を受け、細胞高次調節機構の異常に繋がるのか、そのメカニズムの解明を目指す。
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