研究課題
1) Cdc7による複製起点の認識機構、開始制御機構の解明:分裂酵母Hsk1/Cdc7をバイパスするmrc1欠損とrif1欠損について両者により活性化される複製起点を詳細に比較した。Rif1の結合部位を正確にマップした。後期複製起点の近傍に結合し複製開始を抑制している可能性が示唆された。rif1欠損とwt株でCdc7-Dbf4増産の影響を比較した。複製ストレスによりCds1依存的にDbf4-Cdc7, Dbf4/Cdc7-Mrc1の相互作用が低下する可能性を示唆するdataを得た。Cdc7によるリン酸化が複製開始を触媒するメカニズムの解明については、動物細胞精製複製因子を用いたoriP-EBNA上での複製複合体構築の解析を行なった。後者ではoriP-EBNA1に依存してCdc6の援助のもとOrc複合体が結合し、構造変化を誘導することを見出した。さらにpre-RC形成の系を構築するために必要なタンパクを精製した。Cdc7の基質の一つであるClaspinのリン酸化部位を決定した。2) Cdc7キナーゼによる複製以外の染色体のダイナミクスの制御:ヒトにおいてもCdc7とPolo kinaseが物理的に相互作用することを証明した。Cdc7阻害により染色体上でのPolo kinaseの活性化が抑制された。Rad18に見出されたCdc7リン酸化部位を決定し、その意義を明らかにした。また、Cdc7が損傷により安定化される機構さらにそれがバイパス修復を誘導する機構を解明した。減数分裂期組換え開始に関与するRec7上のCdc7リン酸化部位の同定を行なった。アラニン置換により組換え頻度の低下する変異体を同定した。3) Cdc7キナーゼ複合体の活性化と基質認識の構造的基盤の解析:微胞子中のCdc7-Dbf4複合体を均一標品にまで大量精製した。Dbf4の活性化ドメインの最小化を試みた。
2: おおむね順調に進展している
分裂酵母のCdc7のバイパス変異の同定と解析など興味深い成果が得られ論文として発表できた。mrc1∆, rif1∆によるCdc7バイパスのメカニズムは異なると考えられる。Cds1依存的にCdc7-Dbf4, Cdc7/Dbf4-Mrc1の相互作用が減少することを見出し、複製チェックポイント制御機構の大きな問題に重要な進展をもたらす可能性が生まれた。分裂期におけるCdc7の役割も全く未知であるが、mitotic kinaseとの相互作用などが明らかとなり、染色体上におけるpolo kinaseの活性化にCdc7が関与する可能性をみいだした。Cdc7キナーゼの構造解析は増産精製で当初問題があったが微胞子中のCdc7-Dbf4の増産精製に成功した。しかし結晶化はまだ成功していない。その間に別グループにより ヒトCdc7複合体の構造が報告された。ヒト複製因子あるいは分裂酵母複製因子をもちいた複製開始の生化学的アッセイ系の確立は ヒトの系で初期の反応系の解析の報告をしたが、まだ複製開始に至までには多くの難関が予想される。
Cdc7キナーゼの構造解析については 方向性を 最小ポリペプチドでCdc7を活性化する方策の開発に転換した。新規相互作用分子の同定、基質分子の同定、またこれまでに同定している新規基質(Claspin, Mrc1, Rec7など)のリン酸化部位を明確に同定しその機能解析をすすめることは継続して進める。分裂酵母を用いてCdc7-Dbf4の複製チェックポイント制御における役割の分子機構の解明は、大きく進展したので最終的に今年度中に論文として報告する。Cdc7をバイパスするRif1の機能は極めて重要である。Cdc7とも相互作用するので その相互作用の意義、複製開始を抑制するメカニズムの解明をめざす。Cdc7のM期における機能についてはpolo kinaseなどと機能的相互作用が明らかとなったのでさらに詳細なメカニズムの解析を行なう。ヒト複製因子の増産精製については昨年度までに開発した動物細胞発現系によりきわめて効率よく行なうことができるようになった。今後精製したタンパクを用いて素反応の再構築を進める。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
J. Biol. Chem.
巻: 288 ページ: 12742-12752
10.1074/jbc.M112.398073.
J. Mol. Biol.
巻: 425 ページ: 4663-4672
10.1016/j.jmb.2013.03.039.
Trends in Genetics
巻: 29 ページ: 449-460
10.1016/j.tig.2013.05.001
巻: 287 ページ: 40256-40265
10.1074/jbc.M112.353805.
Mol. Cell
巻: 47 ページ: 722-733
10.1016/j.molcel.2012.06.023.
PLoS One
巻: 7 ページ: e42375
10.1371/journal.pone.0042375.
Methods
巻: 57 ページ: 214-221
10.1016/j.ymeth.2012.06.016.
Genes and Development
巻: 26 ページ: 137-150
10.1101/gad.178491.111.
EMBO J.
巻: 31 ページ: 3167-3177
10.1038/emboj.2012.180.
Mol. Biol. Cell.
巻: 23 ページ: 1943-1954
10.1091/mbc.E11-10-0829.
巻: 287 ページ: 23977-23994
10.1074/jbc.M112.368456.
巻: 7 ページ: e36372
10.1371/journal.pone.0036372.
細胞工学
巻: 31 ページ: 460-462
実験医学、Current Topics
巻: 30 ページ: 2974-2978