研究課題
オートファジーを遂行する膜オルガネラであるオートファゴソームは、他のオルガネラとは異なり常に新たに形成されるが、どこからそれが現れるのか40年来論争の的となってきた。本研究計画では、応募者が最近見いだした小胞体のオートファゴソーム形成への関与を手がかりに集中的かつ統合的な解析を展開し、オートファジー分野における最大の謎「膜の起源」問題について最終的な決着をつけることを目的としている。初年度である平成23年度は、交付申請書に記載の2つの計画を実施し各々について以下の成果を得た。1)Atg14Lの小胞体上での点状集合に必要な分子としてSyntaxin17を同定した(大阪大学歯学部天野敦雄教授らとの共同研究)。Syntaxin17は小胞体に局在するSNARE familyの膜タンパク質で、これまで機能ははっきりしていなかった。我々は、Syntaxin17がAtg14Lの上流に位置し、Atg14Lの点状集合に必須であることを見出した。またSyntaxin17もオートファジー誘導時に、Atg14Lと同じ場所に集合することを明らかにした。また、電子線トモグラフィーによる揺りかご構造の詳細な検討を行い、構造の近傍にミトコンドリアが存在することを突き止めた。2)上記Syntaxin17が、Atg14Lと共にミトコンドリア・小胞体接触サイトに点状集合することが判明した。さらに、接触サイトの形成に必要なPACS2のノックダウンによって、両者の点状集合が阻害され、かつオートファゴソームも形成されなくなることを示した。以上の知見から、Syntaxin17と共にAtg14Lがミトコンドリア・小胞体接触サイトに集合するとそこでオートファゴソームが形成されるというモデルを考えている。
1: 当初の計画以上に進展している
Atg14Lの点状集合を制御している分子の同定に早くも成功した。しかも、そのSyntaxin17もミトコンドリア・小胞体接触サイトにAtg14Lと共に点状集合しており、オートファゴソームのバイオジェネシスについて、大枠となるモデルを作ることが出来た。このモデルは分野に非常に大きなインパクトをもち、初年度に大金星をあげたといえる。
有力な統合的モデルを構築できたので、今後はその証明とデテールの解明に力を注ぐ。極めてpromisingはプロジェクトとなった。電子線トモグラフィーは、顕微鏡や試料作成装置のセットアップに時間がかかり開始が遅れていたが、漸く稼働し始めデータもとれつつあるので、今後が期待できる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)
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http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/jp/achievement/010/