研究課題/領域番号 |
23247036
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐々木 洋 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (10211939)
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キーワード | 細胞間コミュニケーション / Hippoシグナル / 細胞間接着 / 細胞極性 / 胚発生 / 細胞競合 / 細胞生物学 / 発生生物学 |
研究概要 |
多細胞体の発生においては、個々の細胞の挙動が、細胞間の接触・接着によるコミュニケーションで制御されることが重要である。我々は、マウス初期胚や培養細胞において、細胞間の接触・接着の情報はHippoシグナル経路を介して細胞の分化や増殖を制御することを見出してきた。本研究では、Hippo経路に着目して、細胞間の接触・接着によるコミュニケーションの分子基盤を明らかにすることを目的とし、培養細胞において細胞間接着がHippo経路を制御する機構、および、Hippo経路が隣接した細胞の挙動を制御する機構、を明らかにする。 本年度は、Hippoシグナル経路を制御する仕組みを明らかにするため、主に培養細胞を用いて解析を進めた。マイクロドメインを用いて単一細胞の広がりの程度を制御することにより、細胞密度の変化によるHippo経路の制御機構の一つとして、細胞形態(広がり方)の違いを検知する機構があることを見出した。すなわち、細胞が薄く広がる形をとると、アクチンストレスファイバーの形成が促進され、FアクチンがHippoシグナルを抑制するのである。また、着床前胚において、新規Hippo経路因子Amotが、細胞間接着と細胞極性とによるHippoシグナルの制御に中心的な役割を果たしていることを見出した。一方、Hippo経路が隣接する細胞の挙動を制御する仕組みを明らかにするために、Hippo経路の転写因子Teadの活性を操作した培養細胞と正常細胞との共培養の系を用いて、細胞の挙動変化を解析した。Teadは、Fアクチンを介したフィードバック機構により接触によるHippo経路の活性化を調節し、接触を介して隣接した細胞の状態の違いを認識すること、Teadは下流因子の発現制御などの機構を介して細胞競合を起こすことを見出した。 これらの成果は、細胞の集団が、どのようにして正しく体を作り、生涯維持し続けるのか、その仕組みの解明につながる重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定通り、細胞形態の関与、Amotの役割、細胞間コミュニケーション、の3つについて研究を進め、細胞形態についてはその成果を論文発表した。あとの2つについても、国内外の学会で発表し、論文投稿の準備を進めている。細胞形態については、(1)当初の計画以上に進展している、に該当する。Amotについては、ほぼ予定通りの進捗状況であり、細胞間コミュニケーションについては、来年度分を少し前倒しで研究を進めている。総じて、(2)おおむね順調から(1)当初の計画以上の進展といってよい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は順調に進展しており、特に、問題となる事項はない。来年度も、このペースを維持して研究を推進できるように心がける。細胞形態の研究は、今年度で一段落したので、Amotに注目した解析と、培養細胞での細胞間コミュニケーションの解析に力を入れる。また、これまで準備を進めてきた、細胞間コミュニケーションが胚発生に果たす役割についても、本格的に研究に着手する。
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