研究課題
前後軸形成の機構が、羊膜類でどのように改変されているか明らかでない。哺乳類と鳥類はもっとも遠縁で、マウスでは前後軸はヘッドオーガナイザー遺伝子を発現するAVE の形成に始まる。Nodal はその形成に主要な働きをする。他方ニワトリでの前後軸は尾側にトランクオーガナイザ–遺伝子を発現するコラーの鎌とPMZ の形成にはじまる。この時期の発生にNodalは働かない。ウサギ、ブタ、スンクス胚の解析より真獣類では、マウス同様前後軸形成はAVE形成によって前から始まり、Nodal もマウス同様の働きをすると想定された。スッポンでの解析により、コラーの鎌は分子的にも鳥類に特有で、コラーの鎌とPMZ はPME (尾側エピブラスト)に由来すると考えられた。主竜形類(鳥類、ワニ類、カメ類)で前後軸はニワトリ同様PMEの形成によって後ろから始まり、Nodal はこの時期の発生に働かない。より遠縁のゲッコー胚について解析した。PME遺伝子のうちPMEで発現する遺伝子は極めて限られ、その発現は双弓類の進化の過程で主竜形類に至る系譜で獲得されたと考えられた。爬虫類胚は原条を形成せず、原条は哺乳類と鳥類で独立に獲得された嚢胚形成様式である。ニワトリ胚で AVE 遺伝子の多くが嚢胚形成前にhypoblast で発現し、哺乳類AVEと鳥類hypoblast の相同性が提唱されている。しかし、スッポン胚では一部、ゲッコー胚では限られたAVE遺伝子しかhypoblast で発現せず、原条同様AVE遺伝子の発現は哺乳類と鳥類で独立に獲得されたものと想定される。さらにオポッサムでの予備的解析により、AVE 形成による前後軸形成は真獣類で、PME 形成による前後軸形成は双弓類でそれぞれ獲得されたと考えられた。オポッサムとゲッコーでの解析によって、羊膜類祖先での前後軸形成機構に手がかりが得られると期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Developmental Biology
巻: - ページ: -
10.1016/j.ydbio.2015.03.023
巻: 387 ページ: 203-213
10.1016/j.ydbio.2014.01.011