研究課題
前年度に製作した足裏分布剪断力測定センサシステムを用いて、ヒトの実二足歩行中に足裏に作用する3方向の分布荷重を計測した。足裏分布剪断力測定センサシステムは、ひずみゲージ式の3軸ロードセル(3 cm×3 cm)を格子状に22個並べたものであるため、足裏全体をカバーすることができない。そこで本研究では、ロードセルシステムの上に440 mm×480 mmのフィルム式圧力分布測定システム(タクタイルセンサ)を設置し、被験者に歩行運動を行わせた。タクタイルセンサは足裏全体をカバーすることができるため、歩行運動を多試行行わせれば、タクタイルセンサの情報に基づいてロードセルの計測データを時空間的に合成し、足裏全体に作用するせん断力分布を再構成することができる。足裏に作用するせん断力分布を5名の被験者について計測した結果、踵接地時において踵部内側には外側方向に、踵部外側は内側方向に、踵の中心に向けてせん断力が作用していること、立脚期後期は、前足(拇指球・小指球)部分に放射状に力が作用していることなど、足部と床面の詳細な力学的相互作用のメカニズムが明らかとなってきた。また、CT画像に基づいて解剖学的に精密なヒト足部筋骨格系の有限要素モデルを構築した。具体的には、ヒト足部の積層断層画像から、足部を構成する骨と皮膚の3次元形状を抽出し、四面体要素による3次元有限要素メッシングを行った。骨と骨とをつなぐ靱帯は、解剖学的配置に基づいて1次元バネ要素としてモデル化した。この足部モデルを用いて、静止立位時の足部と床面の力学的相互作用を再現した。また、足部構造の一部を仮想的に改変したモデルを構築し、改変した構造が地面との力学的相互作用や足部の変形に与える影響を比較した。こうした枠組みにより、足部の構造が持つ機能的意味を構成論的に明らかにすることが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
計画は予定通り遂行できている。
足裏全体に作用するせん断力分布の実験的研究とモデルによる構成論的研究を融合し、足部と床面との相互作用のメカニズムを明らかにする。
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