研究分担者 |
近藤 徳彦 神戸大学, 大学院・人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
上田 博之 大阪信愛女学院短期大学, 看護学科, 教授 (00203448)
石指 宏通 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50260807)
古賀 俊策 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (50125712)
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研究概要 |
本研究では,老若男女の発汗能力の解明とその生物学的意義を検討するために,以下の4つの実験を実施した.実験(1)では,高温高湿下(30℃・80%RH)で絶対的(100 watts)・相対的(50%VO_2max)強度が同一の運動を負荷した場合,女性の全身発汗量は男性より少なく,我々の先行研究結果を支持した.この女性で観察された少ない発汗量は少ない無効発汗量(皮膚面から蒸発せず滴下した汗)に起因し,有効発汗量(皮膚面から蒸発した汗)には性差はみられなかった.そのため,このような条件では,女性は男性より優れた発汗効率を有することが示唆された.実験(2)では実験(1)で観察された発汗効率の性差は相対湿度で影響されるのか検討した.熱産生量を同一に設定した100watts運動において,高湿下(32℃・80%RH)では深部体温の上昇度に性差がみられなかったものの,女性が男性より優れた発汗効率を示し,実験(1)の結果を支持した.相対湿度(32℃・30%RH)の低下は男女とも発汗効率を増大して生体負担度を軽減し,高湿下で観察された発汗効率の性差は低湿下では消失した.実験(3)では,70歳代高齢者の汗腺機能(イオントフォレーシス法,アセチルコリン誘発性発汗)の性差および20-60歳代の我々の先行研究データを加えて老化過程の性差も検討した.汗腺機能の性差は70歳代においても直接刺激性発汗や軸策反射性発汗で観察され,女性が男性より低い発汗量を示した.男女とも加齢に伴い汗腺機能が低下し,その低下の程度は男性が女性より大きいため,70歳代の性差は20歳代より小さくなった.実験(4)では,70歳代高齢者の皮膚温度感受性(温覚・冷覚閾値熱流束差)の性差と加齢的変化を検討した.若年成人において皮膚の温覚・冷覚感受性は女性が男性より鋭敏で,加齢に伴い鈍化するものの,その性差は70歳代でもほぼ同様に観察された.加齢に伴う鈍化の程度には身体部位差が存在し,男女とも四肢が躯幹部や頭部より顕著だった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験(1)(2)において,発汗能力の性差を有効発汗量と無効発汗量から検討した.70歳以上の高齢者(54名)を被験者として依頼することが可能になったため,24年度実施予定であった実験(3)(4)を23年度に繰り上げ実施した。そのため,23年度に実施予定であった子どもの発汗能力の性差に関する実験を次年度以降に変更した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,短期および長期運動トレーニングや短期暑熱順化が汗腺機能に及ぼす影響の性差・年齢差,さらには汗腺機能と性ホルモンの関連性およびその年齢差・民族差を検討して,老若男女の発汗能力とその生物学的意義の解明に努める.さらに,単一汗腺のサイズ・構造を測定する方法にチャレンジし,その方法を用いて老若男女の発汗能力の解明にも努める.
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