研究課題/領域番号 |
23247046
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
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研究分担者 |
上田 博之 大阪信愛女学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
石指 宏通 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50260807)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アセチルコリン / 汗腺機能 / 短期運動トレーニング / 性差 / 長期運動トレーニング / 子ども / 高齢者 / 性ホルモン |
研究概要 |
本研究では,老若男女の発汗能力の解明とその生物学的意義を検討するために,以下の3つの実験を実施した. 実験(1)では,健康な男女大学生に対し,32℃・50%RH環境下で1日60分間の自転車運動(135拍/分の定脈拍数運動)を10日間負荷した場合,男女(VO2maxは男性で14%,女性で7%増加)とも末梢の軸索反射性発汗(交感神経節後線維の要素を反映する)を改善しないものの,男性でのみ直接刺激性発汗(汗腺それ自体の要素を反映する)を亢進する可能性が示唆された.さらに,軸索反射性・直接刺激性発汗は女性が男性より劣ることを報告した先行研究結果を支持した. 実験(2)では,子ども,若者,高齢者の運動鍛錬者(T群)と同非鍛錬者(U群)のアセチルコリン誘発性発汗テストを実施した.その結果,汗腺機能における運動トレーニング効果の年齢差を検討した.なお,VO2max・日常歩行量では年齢に関わらずT群がU群より有意に高く,T群のVO2maxとU群の日常歩行量には年齢差はみられず,U群のVO2maxおよびT群の日常歩行量では子どもが若者・高齢者より有意に高かった.発汗テストの結果,汗腺機能は年齢に関わらず長期運動トレーニングで亢進し,その亢進の程度には年齢差が存在し,特に直接刺激性発汗(汗腺それ自体の要素を反映する)で子どもと高齢者が若者より小さいことが示唆された. 実験(3)では,男性運動鍛錬者と同非鍛錬者のアセチルコリン誘発性発汗と性ホルモン(テストステロン・エストラジオール)や成長ホルモンの関連性を検討した.その結果,運動トレーニングは軸索反射性発汗および直接刺激性発汗を亢進し,その亢進の程度に身体部位差が存在する先行研究結果を支持した.しかし,運動トレーニングに伴う汗腺機能の亢進が女性ホルモンと有意に関連することが示されたが,男性ホルモンや成長ホルモンとは関連しないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験(1)では短期運動トレーニングが汗腺機能に及ぼす影響の性差,実験(2)では長期運動トレーニングが汗腺機能に及ぼす影響の年齢差,実験(3)では汗腺機能と性ホルモンの関連性を,いずれも計画通りに実施でき,老若男女の発汗能力とその生物学的意義の解明に努めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,短期暑熱順化が汗腺機能に及ぼす影響の性差,さらには汗腺機能と性ホルモンの関連性の年齢差・民族差,運動時発汗量の身体部位差とその性差,80歳代高齢者の汗腺機能・皮膚温度感受性を検討して,老若男女の発汗能力とその生物学的意義の解明に努める.さらに,性ホルモンと汗腺機能の縦断的検討および単一汗腺のサイズ・構造を測定する方法にもチャレンジし,その方法を用いて老若男女の発汗能力の解明にも努める.
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