研究課題/領域番号 |
23247046
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
井上 芳光 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70144566)
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研究分担者 |
上田 博之 大阪信愛女学院短期大学, その他部局等, 教授 (00203448)
石指 宏通 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50260807)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
近江 雅人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60273645)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アセチルコリン / 汗腺機能 / 発育過程 / 老化過程 / 性差 / 運動鍛錬者 / 性ホルモン / 光コヒーレンストモグラフィ |
研究実績の概要 |
本研究では,老若男女の発汗能力の解明とその生物学的意義を検討するために,以下の4つの実験を実施した.実験(1)では,6~24歳男女のアセチルコリン(ACh)誘発性発汗を測定し,発育過程における発汗機能の性差を検討した.その結果,発汗量には思春期まで性差は観察されなかったが,思春期に伴う男子の顕著な亢進により性差が出現した.その性差は,活動汗腺数ではなく,単一汗腺あたりの汗出力の増加に起因した.実験(2)では,日本人の若年男性の運動鍛錬者と同非鍛錬者のACh誘発性発汗を測定し,その汗腺指標と安静時のテストステロン・エストラジオール・成長ホルモンの関連性を検討した.その結果,運動トレーニングは汗腺機能を亢進することが再確認された.しかし,若年者の横断的データの観察では,運動トレーニングに伴う汗腺機能の亢進に関して,汗腺機能の指標の一部が女性ホルモンと関連したものの,男性ホルモンや成長ホルモンとは関連しないことが示唆された.実験(3)では,若年者と高齢者の掌握運動直後における示指の手掌面のエクリン汗腺を光コヒーレンストモグラフィで視覚化し,この情報から解析した汗腺容積を両群間で比較した. その結果,精神性発汗時における示指の汗腺容積には有意な年齢差は認められなかった.実験(4)では,80歳以上の被験者に対し,皮膚の温度感受性を測定し,これまでの20~70歳代のデータも加えて考察した.その結果,皮膚の温覚・冷覚感受性は加齢に伴い鈍化し,80歳代で性差は小さくなった.加齢に伴う鈍化の程度には身体部位差が存在し,四肢部が躯幹部や頭部より顕著だった.加齢に伴う冷覚感受性の低下は,80歳代では歩行量の確保で抑制できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験(1)では発達過程における汗腺機能の性差,実験(2)では日本人若年男性の運動鍛錬者と非鍛錬者における汗腺機能と性ホルモンとの関連性,実験(3)では掌握運動直後に光コヒーレンストモグラフィで求めた示指手掌面の汗腺容積における高齢者と若年者の比較,実験(4)では80歳高齢者の皮膚温度感受性とその性差,いずれも計画通りに実施でき,老若男女の発汗能力とその生物学的意義の解明に努めた.
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今後の研究の推進方策 |
性同一性障害の治療のため,女性で男性ホルモンを服用する者のアセチルコリン誘発性発汗を測定し,服用前(23年度)の発汗反応と縦断的に比較検討する.さらに,高齢者の全身と局所の皮膚温度感受性およびアセチルコリン誘発性発汗を測定し,老化に伴う汗腺機能の低下に局所および全身の皮膚温度感受性がどの程度関連するのか考察する.さらに,これらの2実験の結果に,2011年度の4実験,2012年度の3実験,2013年度の4実験,2014年度の4実験の累積された結果を加えて,発汗能力の発育・老化過程およびその性差の生物学的意義を考究する.
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備考 |
我々の老若男女の発汗能力に関するデータが,日本経済新聞(05/25日朝刊),読売新聞(07/01日夕刊,07/25朝刊,08/02朝刊)に掲載され,朝日放送の「キャスト」(06/17), NHK総合テレビの「ニューステラス関西」(07/24),読売テレビの「カンサイ情報ネット ten」(07/25)・朝生ワイド「す・またん!」(08/01)などで放送された.
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