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2012 年度 実績報告書

イネ科作物の発生・形態形成を司る制御機構の解明と分子育種への展望

研究課題

研究課題/領域番号 23248001
研究機関東京大学

研究代表者

平野 博之  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192716)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2015-03-31
キーワード維管束分化 / 護穎 / 発生・形態形成 / G1遺伝子 / 小穂 / イネ / 花序
研究概要

作物の形態は、収量や栽培のしやすさなどの農業形質と深く関連している。本研究では、イネを中心としてその形態形成メカニズムを明らかにし、それを将来の分子育種に活用することを目指して研究を進めている。
イネの小穂には、護穎と呼ばれる他のイネ科植物には見られない特有の期間が存在する。G1遺伝子は、この護穎アイデンティティーを決定する遺伝子として見いだされた。G1が機能を喪失したg1変異体では、護穎が外穎様の大きな器官へとホメオティックに変化する。しかし、SUG1遺伝子に変異がおこると、このg1変異が抑圧され、小さな器官へと逆戻りする。このSUG1遺伝子を単離することを目的として、マッピングを行った。F2集団の表現型の判定が想定以上に難しく、SUG1が座乗する染色体は決めたものの、詳細のマッピングには至らなかった。また、sug1変異は、穂における小穂の着生パターンにも影響を与えることが判明し、新たな研究の展開の可能性が示された。
ng6569系統では、細い小穂が生じる。この変異の原因となる遺伝子を同定した結果、ALOGドメインをコードするTRIANGULAR HULL1 (TH1) 遺伝子に変異があることが判明した(th1-6569アレルと命名)。詳細な表現型解析の結果、TH1はtubercle サイズを制御することによって、内外頴の幅を決定していることが明らかとなった。また、TH1は、内外頴の基部より先端部でより大きな役割を果たしていることが判明した。さらに、g1およびeg1変異体との2重変異体を作製し、これらの異所的外穎様器官へのth1変異の影響を調べた。その結果、th1変異はg1変異体の異所外穎の形態にはあまり大きな影響を与えないものの、eg1変異体の過剰外穎には、本来の外穎と同様の効果があることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

th1-6569変異体については、表現型解析をすべて完了し、遺伝子を同定することもできた。本変異体の解析中に、海外から同じ遺伝子の変異を解析した論文が出版されたが、詳細な表現型解析の結果、その論文では明らかにされていない点も解明するとともに、g1やeg1遺伝子との相互作用の解析も行い、いくつかの新たな知見が得られた。これらをまとめて、現在論文として投稿中であり、この遺伝子の解析に関しては、当初の計画以上に進展していると考えられる。
一方、SUG1については、マッピング集団の表現型の判断が非常に難しく、座乗位置についてはある程度の絞り込みにとどまるに至った。しかし、sug1変異には小穂の着生のパターンに変異が見られ、花序構築にも関わるなど、当初予定していなかった役割をSUG1が果たしている可能性も示唆された。したがって、SUG1機能の推定については、順調に進んでいると考えられる。
以上のことから、全体を判断して、今年の達成度は、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

SUG1遺伝子を単離することが、今後の最大の課題となる。昨年度の経験から、マッピング集団における表現型解析のポイントがいくつか明らかになった。さらに、昨年度栽培したイネの中からマッピングに効果的に使える系統を多数見いだした。この材料と昨年度の経験を生かして、本年度は、SUG1遺伝子の座乗領域を絞り込み、できれば、遺伝子同定を行いたい。また、SUG1遺伝子の機能を調べるために、成熟した小穂の表現型に加えて、発生中の小穂を操作電子顕微鏡などを用いて、綿密に詳しく観察・解析する。さらに、昨年度見いだした小穂の着生パターンへの役割についても、詳細に解析を進める。
葉の発生分化について、維管束分化に着目しつつ研究を進める。本研究テーマでは、維管束予定領域で発現していることが判明しているWOX4を中心にして解析を進める。WOX4の誘導的発現抑制、および、誘導的過剰発現の実験系を用いて、WOX4の維管束形成における機能を解明する。さらに、篩部や木部分化のマーカー遺伝子を用いて、in situ hybridization などを行い、 転写因子であるWOX4が制御する遺伝的ネットワークと維管束分化制御の詳細メカニズムを明らかにする。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2014 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] The DROOPING LEAF and OsETTIN2 genes promote awn development in rice.2014

    • 著者名/発表者名
      Toriba, T., and Hirano, H.-Y.
    • 雑誌名

      Plant J.

      巻: 77 ページ: 616-626

    • DOI

      10.1111/tpj.12411

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] WUSCHEL-RELATED HOMEOBOX4 is involved in meristem maintenance and is negatively regulated by the CLE gene FCP1 in rice.2013

    • 著者名/発表者名
      Ohmori, Y., Tanaka, W., Kojima, M., Sakakibara, H., and Hirano, H.-Y.
    • 雑誌名

      Plant Cell

      巻: 25 ページ: 229-241

    • DOI

      doi:10.1105/tpc.112.103432

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Grass meristems II: inflorescence architecture, flower development and meristem fate.2013

    • 著者名/発表者名
      Tanaka, W., Pautler, M., Jackson, D., and Hirano, H.Y.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 54 ページ: 313-324

    • DOI

      doi:10.1093/pcp/pct016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Grass meristems I: shoot apical meristem maintenance, axillary meristem determinacy and the floral transition.2013

    • 著者名/発表者名
      Pautler, M., Tanaka, W., Hirano, H.Y., and Jackson, D.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 54 ページ: 302-312

    • DOI

      doi:10.1093/pcp/pct025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Two WUSCHEL-related homeobox genes, narrow leaf2 and narrow leaf3, control leaf width in rice.2013

    • 著者名/発表者名
      Ishiwata, A., Ozawa, M., Nagasaki, H., Kato, M., Noda, Y., Yamaguchi, T., Nosaka, M., Shimizu-Sato, S., Nagasaki, A., Maekawa, M., Hirano, H.-Y., and Sato, Y.
    • 雑誌名

      Plant Cell Physiol.

      巻: 54 ページ: 779-792

    • DOI

      doi:10.1093/pcp/pct025

    • 査読あり
  • [学会発表] 内外穎の形態が異常となったイネ突然変異体の表現型解析と遺伝子同定2014

    • 著者名/発表者名
      佐藤大輔,大森良弘,永島はるか,平野博之
    • 学会等名
      日本育種学会第125回講演会
    • 発表場所
      東北大学(宮城)
    • 年月日
      20140321-20140322
  • [学会発表] イネの発生を制御する主要遺伝子は芒形成にも必須である2014

    • 著者名/発表者名
      鳥羽大陽,平野博之
    • 学会等名
      日本育種学会第125回講演会
    • 発表場所
      東北大学(宮城)
    • 年月日
      20140321-20140322
  • [学会発表] Genes that regulate of meristem fate and spikelet development in rice2013

    • 著者名/発表者名
      Hirano, H.-Y.
    • 学会等名
      Japan-China Joint Workshop on Organ Development Mechanism in Rice
    • 発表場所
      Hotel Shiragiku (Ohita)
    • 年月日
      20130307-20130309
    • 招待講演
  • [学会発表] Regulation of meristem fate and spikelet development in rice2012

    • 著者名/発表者名
      Hirano, H.-Y., Tanaka, W., and Toriba, T.
    • 学会等名
      10th International Congress on Plant Molecular Biology
    • 発表場所
      Jeju, Korea
    • 年月日
      20121021-20121026
  • [学会発表] イネ小穂の発生における側生器官とメリステムとのコミュニケーション2012

    • 著者名/発表者名
      平野博之,田中若奈
    • 学会等名
      日本遺伝学会第85回大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡)
    • 年月日
      20120924-20120926
    • 招待講演
  • [備考] 進化遺伝学研究室: Publication

    • URL

      http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/hirano/EvoGenet_3/Publication.html

  • [備考] 進化遺伝学研究室: 研究紹介リンク

    • URL

      http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/hirano/EvoGenet_3/Link.html

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公開日: 2015-05-28  

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