研究課題/領域番号 |
23248001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 博之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192716)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発生・形態形成 / 維管束 / 小穂 / 花序 / TAB1遺伝子 / WOX遺伝子 / 護穎 / イネ |
研究実績の概要 |
イネにおいて,WOX4遺伝子は茎頂メリステムにおける未分化細胞の維持にはたらく重要な遺伝子であることを,これまでに明らかにしている.本研究では,維管束をはじめとする葉の発生・分化において,WOX4がどのような機能を持っているかを明らかにする目的で研究を進めてきた.その結果,WOX4は,細胞分裂や中肋形成など,いくつかの重要な発生イベントに関与することが判明しつつある. また,WOX4と同じ遺伝子ファミリーに属し,シロイヌナズナのWUSCHEL (WUS)のオーソログであるTILLARS ABSENT1 の機能解析を行った.その結果,TAB1は,腋芽形成の初期過程で重要な役割を果たしていることを明らかにした.tab1が欠損すると,腋芽(分蘖)が全く形成されない.種々の分子遺伝学的解析により,TAB1は,腋芽メリステムが形成される初期過程において,一過的に発現し,その未分化性を維持するために働いていると結論した.一方,TAB1は,茎頂メリステムや完成した腋芽メリステムでは発現しておらず,シロイヌナズナのWUSのような機能は持っていないと考えられる.TAB1の発現が消失するころになると,WOX4が発現するようになることも明らかとなった.すなわち,2つのWOX遺伝子は入れ替わるように発現し,腋芽メリステムの未分化性を制御していると考えられる.分蘖形成は,米の収量とも密接に関わっているので,本研究成果は育種学的にも重要である. 野生イネやインディカ品種などでは,小穂の先端に,芒という針状の器官が形成されることがある.この芒形成に,ARF遺伝子の一種であるOsETT2とDROOPING LEAF遺伝子が重要な働きをしていることを明らかにした. SUG1遺伝子は,護穎がホメオティックに外穎に変化するg1変異を抑圧する.本年度は,sug1変異が,護穎アイデンティティーに対して非対称的に作用すること,不完全優性遺伝をすること,単独変異では小穂形態に影響を与えないことなどを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TAB1の機能解析については全て終了し,論文として発表した (The Plant Cell, online) .WOX4に関しては,当初の葉の発生・分化における機能解析は順調に進んでいる.また,腋芽形成過程において,TAB1とWOX4の発現が入れ替わってメリステムの未分化細胞を維持しているという研究成果は,当初の計画にはなかった大きな研究成果である.また,小穂の芒形成の制御についても,研究は順調に進展し,論文としてまとめることができた.
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今後の研究の推進方策 |
WOX4が,葉の発生・分化をどのように制御しているのかを解明することを中心に研究を進める.とくに,WOX4の作用と細胞周期や維管束形成などを制御する遺伝子の発現制御との関連を調べる.また,トランスクリプトーム解析を行い,WOX4が制御する遺伝子の全体像を明らかにする.
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