研究課題
本研究の目的は、イネ穂構造の分子機構総括的に理解することである。イネの穂構造についてはこれまでに様々な研究が行われており、最近は、QTL解析により穂構造関連遺伝子が単離されている。本研究では、穂構造に関する形質QTLと、マイクロアレイによる穂形成時のイネ全遺伝子の発現QTLを行い、形質と発現QTLを統合することで、穂構造に関与する遺伝子群を網羅的に抽出し、穂形成の遺伝子ネットワークを構築することを試みる。本年度は、形質QTLと発現QTLの融合により、実際効率的にQTL遺伝子が単離出来るか否かについて、評価が簡単な初期生育に関わるQTL遺伝子を事例として試みた。その結果、発現QTL解析を用いて、初期生育を促進するQTL、qEPD2、の領域内に45個の候補遺伝子を絞り込むことに成功した。さらに、この中からOsGA20ox1がqEPD2に対応する可能性を想定し、コシヒカリ由来のOsGA20ox1ゲノム断片をSL^<qEPD2>に導入した形質転換体は、草丈の伸長が見られるが、ババタキ由来のOsGA20ox1は有意な伸長効果が見られないことをつきとめた。以上結果から、OsGA20ox1は初期生育に関わる重要な遺伝子であることが示されると同時に、QTLマッピングとマイクロアレイ解析を併用することでQTLの候補遺伝子を効率よく絞り込むことが可能であり、本方法が短時間でQTL領域の遺伝子を絞り込む有効な手段であることが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
本課題の最大の課題である、形質QTLと発現QTLの融合により、実際効率的にQTL遺伝子が単離出来るか否かについて、評価が簡単な初期生育に関わるQTL遺伝子を事例として試み実際に本手法が実際に有効であることを示した。
本手法が有効であることが示されたので、本研究の本来の目的である穂構造に関する形質QTLと、マイクロアレイによる穂形成時のイネ全遺伝子の発現QTLを行い、形質と発現QTLを統合することで、穂構造に関与する遺伝子群を網羅的に抽出し、穂形成の遺伝子ネットワークを構築することを試みることに邁進する。
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