研究課題
糸状菌のCD(Conditionally Dispensable)染色体とは、生存、成育には必要ではないが、植物寄生など特定の生活環にのみ必要な染色体である。先に、宿主特異的毒素を生産するAlternaria alternata病原菌のうち、イチゴ黒斑病菌、リンゴ斑点落葉病菌、トマトアルターナリア茎枯病菌の毒素生合成遺伝子(TOX)クラスターが小型のCD染色体にコードされていること、さらにこれらCD染色体が同一起源であることを見出した。CD染色体の進化的起源と進化過程を探るために、今年度は主に以下の研究を実施した。1.CD染色体にコードされる遺伝子の分子系統学的解析(花田・柘植): イチゴ菌とリンゴ菌のCD染色体の全遺伝子について、A. alternataと他の菌類から相同遺伝子を検索し、約45%の遺伝子について相同遺伝子を見出した。それら遺伝子の分子系統学的解析によって、TOX以外の遺伝子のほとんどが主要染色体遺伝子のゲノム内重複によって、一方、TOXの多くが水平移動によって成立したことを示す結果を得た。2.CD染色体の起源染色体の探索(児玉): 国産および外国産の非病原性A. alternata菌株の一部から、CD染色体保存遺伝子をコードする約1.0 Mbの小型染色体を見出した。次世代シークエンサーを用いて、これら菌株のゲノムドラフト配列を決定し、CD染色体の保存領域の存在を確認した。この結果は、これら非病原性菌株の小型染色体がCD染色体の起源染色体であることを示唆した。3.イチゴ菌のTOX遺伝子群の発現制御機構の解析(柘植): イチゴ菌のTOXクラスターにはZn2Cys6タイプの転写制御因子(AftR)がコードされている。AFTRサイレンシング株は毒素生産性を失うこと、また高発現株は毒素生産性が顕著に向上することを確認した。さらに、AFTRサイレンシング株、高発現株では、すべてのTOX遺伝子群の転写が同調的に低下、向上することを確認し、AftR がTOX遺伝子群の正の制御因子であることを明らかにした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 2件)
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