平成23年4月に基盤研究(A)に採択され研究を開始したが、本年3月11日の震災により研究機器類や実験試料に被害を受け、研究開始の4月には充分な研究環境が整わない状況であった。さらに、基盤研究(S)の採択通知(平成23年5月31日内定)受けたことから、本基盤研究(A)は今年初めて採択されてから2ヶ月にも満たない研究期間で辞退せざるを得なかった。従って、以下の成果しか得られていない。 他のニトリルヒドラターゼ(NHase)の活性中心部分の立体構造解析を参考に、Rhodococcus rhodochrous J1株の低分子量型ニトリルヒドラターゼ(L-NHase)の(αサブユニットの)コバルトに配位している2つの酸化システイン残基(システインスルフィン酸とシステインスルフェン酸)とβサブユニットの2つのアルギニン残基との間で各々塩橋を形成する静電引力が、Self-Subunit Swappingが起こる駆動力として重要であることを極く最近、本申請者らは解明した。しかし、NHaseの構造からだけでは、αサブユニットと(Self-Subunit Swappingシャペロンの)eタンパク質が複合体中でどのような構造をとっているかは不明であり、構造学的見地からSelf-Subunit Swappingを解明するために、本複合体および複合体が直接作用するL-NHaseの立体構造解析を行うことを目的として実験を行った。結晶化に必要な十分量の複合体とL-NHaseを調製するために、L-NHaseのαβ両サブユニットおよびeタンパク質の構造遺伝子を導入したRhodococcus属形質転換体を調製後、大量培養を行った。得られた菌体を破砕後、各種クロマトグラフィーを利用して複合体とL-NHaseの精製を行った。
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