研究課題/領域番号 |
23248014
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 順 京都大学, 農学研究科, 教授 (70281102)
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研究分担者 |
日比 慎 京都大学, 農学研究科, 助教 (30432347)
岸野 重信 京都大学, 農学研究科, 助教 (40432348)
安藤 晃規 京都大学, 生理化学研究ユニット, 助教 (10537765)
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キーワード | 酵素合成 / 微生物変換 / ジカルボン酸 / ジオール / オレフィン / NADH / ATP / 水酸化 |
研究概要 |
ラッカーゼを用いた不飽和脂肪酸のジカルボン酸への変換反応について検討した。Trametes sp.Hal株由来のラッカーゼを触媒として用い、様々な二重結合位置や水酸基、カルボニル基などの置換基を有する炭素数18の不飽和脂肪酸を基質とし、メディエーターである1-hydroxybenzotriazoleと共に反応に供した。様々な不飽和脂肪酸基質を用いて反応を行った結果、生成物は酸化的な炭素-炭素結合開裂により生成するジカルボン酸(リノール酸基質の場合、炭素数9のジカルボン酸)であることがわかった。また、開裂位置は二重結合位置や置換基の位置に影響を受けていることがわかった。 リノール酸を効率よく共役リノール酸へと変換する乳酸菌Lactobacillus plantarumを取得し、その反応機構を詳細に解析した。その結果、本反応はリノール酸を水和して10-hydroxy-cis-12-18:1を生成する反応を初発に、水酸基の酸化、二重結合の異性化、水酸基への還元、脱水と複数の反応を介して共役リノール酸へと変換することを明らかにした。また、これらの反応を触媒する3種類の酵素(CLA-HY,CLA-DH,CLA-DC)を同定し、さらに本酵素をコードする遺伝子配列を決定した。続いて本菌のゲノム配列より、決定した遺伝子配列と関係が示唆される遺伝子配列(cla-er)に注目し、CLA-ERを大量発現する形質転換大腸菌を作成した。作成した形質転換大腸菌より調整した精製酵素CLA-ERを用い、本酵素の機能解析を行ったところ、本酵素は乳酸菌における不飽和脂肪酸の飽和化反応の鍵酵素であることを明らかにした。本酵素は、飽和化代謝中間体の分子内エノン構造を認識し、二重結合を単結合へと飽和化する反応を触媒することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バイオベースケミカルインダストリーの原料として油脂類を想定し、脂肪酸からラッカーゼを触媒としてモノマー原料となるジカルボン酸を生産する反応を新たに見いだした。一方、乳酸菌に見いだした脂肪酸変換反応を活用して、二重結合位置を制御する事も可能となったため、生成するジカルボン酸の炭素鎖長を制御できる技術が確立できた。現在、C6、C9、C10、C11のジカルボン酸の生産が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
素反応の探索開発が順調に進んでいることを考慮し、より、エネルギー・電子を橋渡しする微生物機能の開発に注力する。既に、酵母の解糖系を活用するATP供給系、脂肪酸高生産糸状菌における高いアシルCoA合成活性、グルコース脱水素酵素を用いるNAD(P)H再生系、TCA回路の活用とSOD高発現による電子伝達の効率化などの実績を挙げており、これらの技術を、今回見いだした素反応とカップリングさせ、反応の多様性を開拓する。
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