研究課題/領域番号 |
23248015
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
浅野 泰久 富山県立大学, 工学部, 教授 (00222589)
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研究分担者 |
米田 英伸 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50285160)
冨宿 賢一 富山県立大学, 工学部, 助教 (70392090)
鈴木 淳巨 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40196788)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 光学分割 / 微生物酵素 / 植物酵素 / ラセマーゼ / 含窒素化合物 |
研究概要 |
本研究では、植物および微生物の「アルドキシム-ニトリル経路」の酵素群や他起源の含窒素化合物転換酵素を開発し、有機合成化学では不可能な種々の反応に有効に利用している。すなわち、ニトリルヒドラターゼ、立体選択的アミノ酸アミド加水分解酵素、ACLラセマーゼ、カルボン酸アミド化酵素、植物由来ヒドロキシニトリル・リアーゼ(HNL)等、多数の含窒素化合物変換酵素分子を用いて、有用物質合成反応を達成するための基盤整備と応用展開を行った。 (1)ニトリルヒドラターゼについては、中等度好熱菌、超好熱菌における「アルドキシム-ニトリル経路」の酵素化学とその利用について、微生物の分離、アミド合成への利用について検討した。 (2)ACLラセマーゼについては、産生する微生物を多数得た。すなわち、ACLや各種アミノ酸アミドに対するラセマーゼ活性について酵素化学的諸性質を明らかにした。また、既知の一次構造から、新たにデータベース上に存在すると考えられるACLラセマーゼをin silicoで探索した。 (3)名古屋大学と共同で、ACLラセマーゼについて、X線構造解析の結果を得、変異による基質特異性の拡張について検討し、それらの変異型酵素の構造解析を行った。本酵素を用いて種々のフェニルアラニンニトリルからの光学活性アミノ酸の合成を行った。 (4)HNLについては、可溶性発現を左右するアミノ酸残基をランダム変異法やin silicoで探索し、実際に酵素に変異を導入し、それらの酵素の可溶性やフォールディングへの影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)ニトリルヒドラターゼについては、中等度好熱菌、超好熱菌などの微生物を多数分離することに成功した。嫌気性菌からのスクリーニングで、従来報告の無い新しいニトリルヒドラターゼ微生物分布を明らかにした。それらのアミド合成への利用について検討した。 (2)ACLラセマーゼについては、産生する微生物を多数得た。すなわち、ACLや各種アミノ酸アミドに対するラセマーゼ活性について酵素化学的諸性質を明らかにした。また、既知の一次構造から、新たにデータベース上に存在すると考えられるACLラセマーゼをin silicoで探索した。 (3) ACLラセマーゼについて、X線構造解析の結果を得て、変異による基質特異性の拡張について検討し、それらの変異型酵素の構造解析を行った。その結果を踏まえて、変異型酵素を用いて種々のフェニルアラニノニトリルからの光学活性アミノ酸の合成を行った。全く新しいD-およびL-アミノ酸の合成法を確立できた。 (4)HNLについては、可溶性発現を左右するアミノ酸残基をランダム変異法やin silicoで探索し、実際に酵素に変異を導入し、それらの酵素の可溶性やフォールディングへの影響について検討した。特に、全く新しい試みとして、可溶性変異型酵素であるH203Mを再度の変異により不溶性とする変異型酵素を多数得た。タンパク質のフォールディングの基礎研究として重要である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ニトリルヒドラターゼについては、今後微生物の同定、ニトリルヒドラターゼの一次構造の解明、耐熱性を持つ構造上の特徴、アミド耐性の付与などを行う。 (2)ACLラセマーゼについては、in silicoでの探索ソフトを駆使して、ゲノム解析が終了した産生菌を得た、さらに得られない遺伝子については合成を行うことにより、それらの遺伝子クローニングを行う。実際にその遺伝子が活性を発現するかどうか検討し、すべての活性を実証する。このソフトの有効性を確認できるのみならず、微生物の分離によらない手法で、本酵素が探索できることを示すことは画期的な研究となる。また、それらの酵素の基質特異性を明らかにする。 (3) ACLラセマーゼについて、X線構造解析の結果を得て、変異による基質特異性の拡張について検討し、それらの2点変異型酵素の変異点をさらに飽和変異を行い、動力学定数を算出し、変異を最適化する。 (4)HNLについては、さらに新しい可溶性発現が無いかについて、MeHNLでも探索を継続し、さらにそれ以外のHNLの可溶性発現を検討し、可溶性発現の多様性を確認する。
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