研究課題/領域番号 |
23248021
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 太士 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90172436)
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研究分担者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 農学生命科学部, 准教授 (20515861)
山浦 悠一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20580947)
森本 淳子 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50338208)
永山 滋也 独立行政法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (70540558)
根岸 淳二郎 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (90423029)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 連結性 / 森林生態系 / 河川生態系 / 氾濫原 / 農地生態系 / 魚類 / 底生動物 / 撹乱 |
研究概要 |
2004年台風18号により風倒被害を受けた道内の人工林4箇所(美深・雄武・ニセコ・函館)と天然林1箇所(津別)を対象に、地形的特性を表す標高・傾斜角・地形の位置指数(TPI)、林分的特性を表す形状比・本数密度・広葉樹密度・林齢を説明変数として、ロジステッィク回帰モデルを作成した。人工林モデルでは対象地間の地域差を考慮した一般化線形混合モデル(GLMM)、天然林モデルでは一般化線形モデル(GLM)による解析を行った。その結果から、人工林・天然林ともに風倒が発生しやすい地形の基本的な傾向は同じであることが示された。つまり、尾根頂部や斜面上の突出部、または谷の底部などの露出度の高い緩傾斜地形では風倒が発生しやすかった。また、人工林における風倒の発生には、林齢が最も大きく関与しており、より高齢の林分で風倒リスクが高かった。 より有効な湿地水生生物の保全のためには、個々の湿地だけでなく湿地ネットワークを管理する必要がある。そこで水生生物が群集および個体群レベルで、湿地ネットワークにどのように応答するかを検証した。具体的には、グラフ理論に基づく連結性指標を用いて、湿地間の連結性が、各湿地に分布する水生生物(魚類・水生昆虫)の種数、魚類(イバラトミヨ)の個体・遺伝的多様性に与える影響を評価した。その結果、魚類・水生昆虫共に周囲の湿地との連結性が高い湿地程、種多様性が高いこと、移動能力の高い種群のみでその傾向があることが明らかとなった。 自然撹乱下における底生動物の群集動態と個体維持機構の解明をめざした。融雪出水を対象とし、調査対象区間の全水域でハビタットごとに出水影響の違いを評価した。出水中に連結し、流れの緩やかな環境を保つよどみや浸水域が出水時避難場であることが分かった。これらの環境は複雑な河川構造や広い氾濫原によって形成されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
風倒撹乱については、空中写真判読、現地調査によって、人工林と天然林の特徴を導き出すことができた。河川周辺に分布する湖沼群の連結性が、魚類や水生昆虫の種多様性に与える影響をグラフ理論で明らかにすることができた。また底生動物に与える洪水の影響を、避難場との連結性の視点から明らかにすることできた。これらの成果は一流国際誌に受理され、多くの注目を集めた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度に当たるため、これまで蓄積したデータの解析を中心に、論文として纏める方向で研究を継続する。 最終的には、陸域、水域の生物多様性保全における連結性と撹乱の意義、さらに再生の考え方についてまとめる。
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