研究課題/領域番号 |
23248022
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 健二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30208954)
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研究分担者 |
内海 泰弘 九州大学連合, 大学院・農学研究科, 准教授 (50346839)
三木 直子 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (30379721)
松下 範久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (00282567)
楠本 大 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80540608)
種子田 春彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特任助教 (90403112)
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キーワード | MRI / エンボリズム / 乾燥ストレス / キャビテーション / 通水阻害 / 木部染色 / マツ材線虫病 / マツノザイセンチュウ |
研究概要 |
本研究は,独自に開発した樹木用MRI(核磁気共鳴画像装置)を用いた樹木の通水組織の非破壊的な観察手法を軸に,植物組織学,生理学的手法を併用して,乾燥ストレスによる通水阻害の発生と柔細胞死・材変色について検討し,その知見をもとに樹種ごとの通水機能の特徴と萎凋病の枯死機構を解明することを目的とする. 針葉樹に関しては、クロマツとスギの乾燥ストレスによる通水阻害の発生過程をMRIにより可視化した結果、スギでは早材の前半部、クロマツでは早材後半部で主に通水阻害が発生することがわかった。一方、針葉樹13種を対象とした染料注入法による観察の結果、水分分布と染色部位とは必ずしも一致せず、保水部位が必ずしも通水機能を有しているとは限らないことが示された。 落葉広葉樹7種に対する乾燥ストレス試験の結果から、通水機能の回復性とキャビテーション抵抗性との間にはトレードオフがあることが明らかにされ、材の密度はキャビテーション抵抗性と正の相関があることが示された。一方、道管直径は水分通導度とは正の相関があったが、キャビテーション抵抗性とは相関がなかった。カツラの梢端枯れ現象においては水ストレスによるシュートの形態的・生理的変化および木部の通水性を明らかにした。 樹木病害による通水阻害に関しては、2010年度に行った接種試験のMRI画像からみたマツ材線虫病の進展過程と、解剖観察による線虫の樹体内分布との関係の検討を引き続き行っている。特に、樹体内での線虫分布の観察手法の洗練化のため、F-WGAによる線虫の蛍光染色手法の有効性を確認した。さらに、仮道管の気体の通過性を測定する新手法を開発し、マツ材線虫病の進行に伴う変化を検討した結果、興味深いデータが得られた。ナラ枯れ、エゾマツ青変病に関しても、キャビテーション発生メカニズムの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通水阻害メカニズムを明らかにするための仮道管の気体通過性の測定手法に関しては、新たに独自の実験系を確立するため時間がかかり、予算を繰越して問題解決を行った。それ以外の実験は予定通りに行われ、順調に成果を得て、学会発表、論文執筆も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、乾燥ストレスに対する通水阻害に関しては、道管・仮道管における通水阻害後の回復現象に関する実験を予定している。マツ材線虫病における通水阻害メカニズムに関しては、抵抗性マツ家系を用いた実験系によって、線虫の活動と通水阻害発生の関係について検討する予定である。 これらの実験系はほぼ確立されており、特に問題はない。
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