研究課題/領域番号 |
23248025
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鮫島 正浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30162530)
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研究分担者 |
五十嵐 圭日子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
和田 昌久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (40270897)
木村 聡 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00420224)
秋山 拓也 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (50553723)
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キーワード | 酵素 / バイオマス / 木質科学 / 木材細胞壁 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン / バイオリファイナリー |
研究概要 |
本研究では、植物系バイオマスのリファイナリー技術として知られているアンモニア前処理技術ならびに酵素糖化技術の組み合わせを逆手にとり、これらを解析ツールとして利用することによって木材細胞壁の微細構造を解析することを研究の目的とする。 本年度の研究においては、酵素糖化に対してアンモニア前処理が最も効果をあげる木質バイオマスとして知られるシラカバ材を対象として、まず木材腐朽担子菌Phanerochaete chrysosporiumがこの材を分解する際に分泌する菌体外酵素について、二次元電気泳動法を利用したセクレトーム解析により網羅的な検索を行った。また、その結果に基づきアンモニア処理木材の分解に必要な各酵素を選択し、必要な酵素についてはモノコンポーネントとして組換え酵素を作成した。 一方、シラカバ、ヤナギ、ポプラ、ユーカリ、アカシア、ブナ等の広葉樹木粉ならびにそのアンモニア処理材について、構成中性糖、酸性糖、さらにアセチル基等の化学定量分析を行うと同時に、市販のバイオマス分解酵素剤を利用した酵素糖化率を相互に比較し、さらにアンモニア処理により取り込まれた窒素量の定量分析を行い、それらのデータに基づき、アンモニア処理が酵素糖化の効率に与える影響と木材細胞壁の構成要素との相関について解析を行った。その結果、木材中に含まれるキシラン量ならびにアセチル基量が共に多いことが、アンモニア処理による酵素糖化の効率化に大きな影響を与えていることが示唆された。 また、アンモニア処理ならびに酵素処理が木材細胞壁の構造変化に与える影響について、蛍光光学顕微鏡観察、ToF-SIMSによる顕微観察を行った。その結果、アンモニア処理によりヘミセルロースとリグニン間の結合開裂により、ヘミセルロースが表面に露出してくること、さらに酵素糖化によりヘミセルロースの分解が著しく進行することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度の当初に計画していた実験内容についてはすべての目標を達成することができた。また、その結果により、アンモニア処理の効果が木材細胞壁中のキシラン量ならびにアセチル基量に大きく異存していることを示唆するデータを取得したことにより、今後の研究展開を図るための大きな指針が得られた。また、成果の欄には記さなかったが、別途、Nano-SIMSによる顕微観察を計画に加えることが可能となり、それにより、アンモニア処理によって導入された窒素原子の細胞壁中での局在性について明らかにすることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
シラカバ材を対象にアンモニア処理によって木材細胞壁中に起こった成分変化について、アセチル基のアミド化ならびにその脱裏について化学分析により情報を取得するとともに、モノコンポーネント酵素を利用したアセチル基やグルクロン酸残基の脱離促進、さらにキシラン抗体を利用した木材細胞壁中でのキシラン存在状態の可視化、さらにアンモニア処理木材の各モノコンポーネント酵素による分解によるキシラン存在状態の変化のToF-SIMSによる観察などを中心に研究を推進することを考えている。
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