研究課題/領域番号 |
23248025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鮫島 正浩 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30162530)
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研究分担者 |
木村 聡 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00420224)
和田 昌久 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40270897)
秋山 拓也 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (50553723)
五十嵐 圭日子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酵素 / バイオマス / 木質科学 / 木材細胞壁 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン / バイオリファイナリー |
研究概要 |
白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumを遺伝子ソースとして、木材細胞壁成分を分解するために必要な各種酵素を酵母菌Pichia pastorisの遺伝子発現系を利用してモノコンポーネントして取得した。また、得られたモノコンポーネント酵素を組み合わせた酵素剤を調製し、これを用いてアンモニア処理シラカバ木粉の糖化実験を行った。その結果、セルロースならびにヘミセルロースをほぼ完全に可溶化できるが、これらから定量的にグルコースならびにキシロース等の構成糖を得るためには、さらにαーグルクロニダーゼを取得することが必要であることが示された。また、取得したモノコンポーネント酵素を利用することで、従来からの化学的な酸加水分解法などを利用した木材細胞壁の構成糖分析に置き換えて、アンモニア処理とそれに引き続く酵素糖化法によって、木材細胞壁の構成糖分析を行うことが可能となった。 キシラン認識抗体を用いた蛍光顕微鏡により、アンモニア処理ならびに引き続くキシラナーゼ処理によるシラカバ材切片の細胞壁上の構成成分の変化について観察を行った。その結果、アンモニア処理前後でキシラナーゼ処理による細胞壁各層でのキシラン脱離の状況が大きく異なることが明らかとなり、細胞壁内でキシラン構造に不均一性のあることが示唆された。さらに、ペクチン認識抗体を用いた蛍光顕微鏡観察においては、細胞壁の複合細胞間層にペクチンが存在することが明らかになったが、一方、アンモニア処理によりペクチン構造からメチルエステル基が脱離することも示された。この結果は、アンモニア処理木材切片にNano-SIMSによる細胞壁中のN原子の導入結果の観察と良く一致をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度については、前処理木材の酵素糖化に必要なヘミセルロース分解酵素のモノコンポーネント組換え酵素の取得実験を担当する研究員が9月に自己都合により退職してしたため、それをバックアップする研究体制の構築ならびに当該実験を担当する研究員の補充採用により、研究進捗に5ヶ月ほどの遅延が生じてしまった。そこで、経費の一部を平成25年度に繰越して実験を継続することにより、モノコンポーネント酵素の取得については、当初の目的をほぼ目的を達成することができた。 また、アンモニア処理ならびにそれに引き続く酵素糖化処理が木材細胞壁の微細構造に与える影響を免疫抗体顕微鏡法を用いて観察すること、さらにこれらの結果とNano-SIMS法による細胞壁観察等を比較検討することにより、木材細胞壁の微細構造に関して新たな知見を得ることが可能であることが示された。 以上の成果に基づき、本年度当初に予定していた目的に対して、目標は概ね達成されたと自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
木材細胞壁中のセルロースならびにキシラン等のヘミセルロースのアンモニア前処理ならびに酵素を用いた完全分解による新たな木材細胞壁成分の分析手法の確立を目指す。そのためには、αーグルクロニダーゼをモノコンポーネント酵素として取得することが必要なので、その取得を行う。その上で、アンモニア処理と酵素糖化を組み合わせた新たな木材分析のためのスキームを組み立てる。 また、各種のモノコンポーネント酵素を組み合わせた酵素剤を調製し、これを用いてアンモニア処理前後の木材のミクロトーム切片を酵素処理した上で、ヘミセルロース構造を認識する各種抗体を用いた免疫顕微鏡法により木材細胞壁構造の観察を行う。また、これに併せて、これらの処理がヘミセルロースならびにリグニン構造ならびにその露出状況に与える影響についても観察を行う。
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