研究課題/領域番号 |
23248026
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西尾 嘉之 京都大学, 農学研究科, 教授 (00156043)
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研究分担者 |
寺本 好邦 京都大学, 農学研究科, 助教 (40415716)
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キーワード | セルロース / 多糖類 / 無機物 / ハイブリッド / ナノコンポジット / 磁性材料 / 液晶 / 機能材料 |
研究概要 |
セルロース及び関連多糖のナノ~メゾ領域の分子集合特性を担持させたネットワークの場で「無機物を有機相に取り込む包埋型ハイブリッド」と「有機相の構造・機能を無機相成長に反映させる転換型ハイブリッド」の各創製を目指した試料調製と測定・解析を行い、以下の成果を得た。 1.包埋型ハイブリッドに関して (1)セルロースアセテート(CA;置換度(DS)>1,80)とポリアクロイルモルホリン(PACMO)のブレンドは相溶系であり、固体^<13>C NR測定により混合スケールは約2mm以下であると評価した。無機フィラーとしてMg-Al型層状複水酸化物(LDH)を合成し、種々の官能基をもつ脂肪族オリゴマーで層間修飾を施した。修飾LDH共存下でのACMOモノマーの重合を介してLDHのナノ層剥離を達成し、無機フィラーで強化されたPACMO/CA相溶ブレンドフィルムの作製に成功した。 (2)セルロース/ポリビニルアルコール(PVA)およびカラギーナン/PVAの複合ゲルの両マトリックスに酸化鉄のin situ合成法を適用し、常温超磁性体を得た。後者の系は延伸配向によって明確な磁気異方性を示すことが判った。 2.転換型ハイブリッドに関して (1)アクリル酸(AA)を溶媒としたエチルセルロース(EC)の液晶溶液から重合硬化法によりEC/PAA液晶複合フィルムを調製しえた。当該フィルムをカルシウムイオンとリン酸イオンをそれぞれ含む各水溶液に交互浸漬し、ヒドロキシアパタイトの沈着生成を検討した。pH=12-13の条件下で液晶フィルム内部にまで無機成長が進行することが判った。 (2)セルロース4-クロロフェニルカルバメートがテトラメトキシシラン(TMOS)/ジメチルホルムアミド中でコレステリック液晶を形成すること、およびTMOSのゾルーゲル反応を経て選択反射色を示す複合固体が得られることが判った。 3.上記1と2に関連した相溶ブレンド系(含グラフトポリマー)と液晶複合系の構造および熱・光学特性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、セルロース及び関連多糖の特性を担持させた複合ネットワークを対象に、「無機物を有機相に取り込む包埋型ハイブリッド」と「有機相の構造・機能を無機相成長に反映させる転換型ハイブリッド」の各創製を目指した先進的機能材料の開拓を推進している。前者の包埋型については、無機強化型複合材料ならびに磁性フェライトナノ分散材料の設計に幾つか成功し成果発表も数多く為し得ていることから、きわめて順調に進展しているといえる。後者の転換型については、母体となるセルロース誘導体の液晶形成に時間を要したものの、二系において無機成長を確認できたのは大きな収穫である。よって、本研究課題は総じておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
包埋型ハイブリッドの創製に関しては、既に調製が成功した系について予定通り性能・機能の精密評価を行うとともに、特に酸化鉄in situ包埋の磁気異方性材料の設計において、より高い異方性と迅速な磁場応答性を示す新規複合系の構築を目指す。転換型ハイブリッドの創製に関しては、23年度に注力した二系について無機相の成長速度を高めるための条件改善を図るとともに、キチン・キトサン誘導体を用いた比較検討も行いつつ、母材となる多糖誘導体液晶のキラル構造がより顕著に反映されたハイブリッド化を目指す。なお、研究体制の変更として、連携研究者であった青木技術補佐員が他機関へ就職したため、24年度以降は連携研究者は無しとし、その対応策として研究協力者(大学院生)を増員(1名分)することとする。
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