研究課題/領域番号 |
23248026
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西尾 嘉之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00156043)
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研究分担者 |
寺本 好邦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40415716)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | セルロース / 多糖類 / 無機物 / ハイブリッド / ナノコンポジット / 磁性材料 / 液晶 / 機能材料 |
研究概要 |
セルロース及び関連多糖のナノ~メゾ領域の分子集合特性を担持させたネットワークの場で「無機物を有機相に取り込む包埋型ハイブリッド」と「有機相の構造・機能を無機相形成に反映させる転換型ハイブリッド」の各創製を目指した研究を行い、以下の成果を得た。 1.包埋型ハイブリッド (1)置換度が2.9以上のセルローストリアセテートがポリアクリロイルモルホリン(PACMO)およびACMOを50mol%以上含有するビニル共重合体と相溶することを見出した。層状クレイをナノフィラーとして取り込める光学機能薄膜として活用しうる。 (2)酸化鉄含有のカラギーナン/ポリビニルアルコール(PVA)複合体について、その延伸フィルムが磁場刺激に対して特徴的な回転・屈曲の動的応答を示すことを見出した。PVA/セルロースナノクリスタル系に酸化鉄微粒子をナノ充填し、超常磁性フィルムを合成することにも成功した。 2.転換型ハイブリッド (1)エチルセルロース/ポリアクリル酸から成る液晶ゲルを調製し、そのコレステリック相にリン酸カルシウムを取り込むことによって、呈色を放つ無機強化複合フィルムを作製しえた。また、生医学材料への応用を意図してキチン/ヒドロキシアパタイト複合ゲルの調製も行った。 (2)溶媒としてのアルコキシシランのゾル-ゲル反応を利用してセルロース4-クロロフェニルカルバメート(Cell4ClPC)の液晶相が固定化されたシリカモノリスを作製し、各種光学測定を行った。左巻きコレステリック構造の固定化を確認した。4-クロロを3-クロロに変えたCell3ClPCを用いると右巻きコレステリック構造のシリカモノリスが得られることも判った。 3.上記1と2に関連して、セルロース系多糖の各種複合フィルムの熱物性と配向特性、および多糖誘導体のキラル液晶の構造と光学特性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、生物有機素材であるセルロース及び関連多糖を基盤とした先進機能材料の新規開拓として、「無機物を有機相に取り込む包埋型ハイブリッド」と「有機相の構造・機能を無機相形成に反映させる転換型ハイブリッド」の各創製を行っている。前者の包埋型については、特に磁気異方性とアクチュエーター機能を有する酸化鉄含有多糖ハイブリッド材料を作製しえたことから、大目標の1つは達成できたといえる。後者の転換型についても、液晶構造をもった多糖/アパタイトのハイブリッドゲル・フィルム、および左右円偏光を分離する多糖ベースのシリカモノリスを作製できたことなどから、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
包埋型ハイブリッドの創製に関しては、磁気異方性を示す複合系の創出例を積み上げること、および無機フィラー強化複合材料の力学・光学性能の向上と精密化を目指す。転換型ハイブリッドの創製に関しては、アパタイトや炭酸カルシウムの沈着速度が早い系の創出(多糖試料の選別)、および光波分離に加えてキラル物質分離機能をも示すシリカモノリスならびにポーラスシリカの作製に注力する。なお、研究分担者の寺本好邦氏が2013年4月に岐阜大学(応用生物科学部)に栄転となったが、そこでの実験室環境は既に整っており、本研究での対象試料の一部の調製や物性測定等において何ら支障は生じないものと判断される。
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