研究課題/領域番号 |
23248034
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中村 將 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10101734)
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キーワード | 卵巣 / 精巣 / 可塑性 / アロマターゼインヒビター / 性的可塑性 / ティラピア / ステロイド産生細胞 / 性分化 |
研究概要 |
本課題では親魚の生殖腺の生殖細胞と体細胞の可塑性を持つ幹細胞の同定と可塑性の分子・細胞生物学的手法による解明を主な目的として研究を進めた。研究を進めるに当たっての基礎として、体細胞の中でも生殖細胞分化に重要な役割を果たす性ホルモン合成細胞(SPC)の起源・分化・発達について微細構造学的およびステロイド代謝酵素の抗体を用いて免疫組織化学的に詳細に調べた。その結果、ティラピアの卵巣のSPCは血管周辺にある特殊な未分化細胞を起源として分化・発達し、最終的に発達した卵を取り囲む莢膜細胞へと分化することを明らかにした。成果は論文として公表した。これを基礎として、アロマターゼ阻害剤(AI)を長期間処理すると機能的な精巣へと性転換する実験系を用いて精巣出現の特定とライデッヒ細胞の起源について調べた。精巣組織分化後にライデッヒ細胞が新たに分化することを明らかにした。 本研究を進めるに当たってAIとして入手困難なFadrozoleの代わりに次世代使用のExemestaneの有効性について、性的未分化なティラピア全雌を用いて検討した。その結果、1mg/g餌料濃度で全ての個体は雄へと性転換させるのに有効であることを明らかにした。この濃度でふ化後70日および150日目の雌へAIを投与して卵巣内の精巣分化を誘導した。ふ化後70日の雌卵巣のAI処理1ヶ月で精巣分化が見られた。一方、ふ化後150日より処理を開始した雌では、処理開始3ヶ月で成熟卵巣内に精巣分化が組織学的に確認された。精巣の分化部位は、ふ化70日目では卵巣全体の卵巣腔に面する腹部側より精巣が出現するのに対して、ふ化後150日目では、卵巣後方の卵巣腔に面する腹部側の特定部位に限られた。このように、精巣の分化部位を特定することで生殖細胞と体細胞の幹細胞の同定が容易になり、今後の研究に重要な成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の生殖細胞と体細胞の幹細胞を同定するための基礎となるステロイドホルモン産生細胞の幹細胞を同定することができた。また、発達した卵巣中に精巣組織が出現する部位を特定することが出来た。アイゴの親でもAIにより精巣へ転換させることに成功した。以上の成果は、24年度以降の研究の進行に重要な成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
三名の博士研究員が本プロジェクト進行に協力する。一人は科研費研究員として雇用し研究を推進する。途中よりJSPS若手研究者戦略的海外派遣事業に異動して海外の大学で新技術を習得して本課題の研究を継続する。残り二名は他の機関で研究を行っているが、以前研究に加わって貰っており研究内容を熟知しているため、技術的アドバイス等で研究に参加する。他に実験補助者および会計担当者計二名を雇用する。成果は国内外の学会シンポジウムで発表する。24年度は研究の中間年度に当たるので研究成果の発表および性の可塑性に関する情報交換のために少人数の研究会を開催する。
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