研究課題/領域番号 |
23248034
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
中村 將 名桜大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10101734)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生殖腺 / 可塑性 / 生殖細胞 / 女性ホルモン / アロマターゼ・インヒビター / アロマターゼ |
研究概要 |
世界初報告、雌雄異体魚の成熟卵巣を精巣へ転換 雌雄異体を示す脊椎動物では、成熟すると性的可塑性を失うと考えられていた。ティラピア成熟雌に雌性ホルモン合成酵素阻害剤(AI)を投与し、女性ホルモンを減少させることで、雄への性転換の誘導に成功した。。同様な方法でメダカ成熟雌の卵巣に精子を作ることに成功した。精子には受精能があり、通常の雌の卵と受精させた場合、生まれてきた仔魚はすべて雌であることを確認した。これらの結果は成熟卵巣でも精巣へと換わりうることを示している。これらの成果は今後養殖技術への応用や希少種の保存への貢献が期待される。なお、本研究成果は2013年に国際誌に掲載された(Paul-Prasanth et al., 2013)。ゼブラフィッシュにおいても同様の方法で成熟卵巣を精巣へと転換し精子を作ることを報告した(Takatsu et al., 2013)。これらの一連の成果は新聞等のマスコミに大きく取り上げられ大きく報道された。 性転換の分子機構の解明を目指して 次世代シーケンサーを利用したRNA sequencing によるミツボシキュウセン生殖腺性転換におけるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、246021本のコンティグを得ることができた。このコンィテグセットをEnsemblに登録されているプロテイン配列データベースに対し相同性検索を行い、17816本のコンティグを抽出した。この抽出された配列セットには生殖に関わるとされる遺伝子が多数含まれていることを確認した。この配列セットをミツボシキュウセンのリファレンストランスクリプトーム配列とした。今後は、今回作成したリファレンストランスクリプトーム配列を利用し、性転換過程において発現変動する遺伝子の抽出、それらの遺伝子の機能解析・相互作用ネットワークの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までの研究成果であるティラピアおよびメダカの成熟した卵巣をアロマターゼ・インヒビター処理により精子を作る精巣へと転換することに成功したことを、世界で初めて成功したことを一流の国際誌に報告することが出来た。その後、ゼブラフィッシュでも同じように成熟卵巣を精巣へ転換できることを国際誌に報告した。新聞、インターネットニュースにも大きく取り上げられ報告された。また、計画していたトランススクリプトーム解析により性転換に関与する遺伝子の解析も順調に進んできていて、候補となる遺伝子も多く採れてきた。今回報告していないが、卵巣の培養により精巣へと転換させ、出来上がった精子による受精の試みも行なわれている。
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今後の研究の推進方策 |
性の可塑性に関連する遺伝子解析をミツボシキュウセンのde novo トランスクリプトームアセンブリにより行い、リファレンストランスクリプトーム配列を取得している。加えて、“ポイント・オブ・ノーリターン” の前後の生殖腺から抽出したRNAをRNA-seq に供し、各サンプルから約3000万リード(PE 90bp)のシーケンスデータを取得している。これらにより網羅的な発現解析を行う準備が整っている。 本年度は、①マッピングソフト(bowtie)を使い、各サンプルから得られたリードをリファレンストランスクリプトーム配列にマッピングし、カウントデータテーブルを作成する。②①で作製したカウントデータテーブルからR package(DEseq, edgeR)を利用し“ポイント・オブ・ノーリターン”前後において発現変動している遺伝子を抽出する。③オンラインデータベース(DAVID、KEGG)を利用し、抽出された発現変動遺伝子の分析(遺伝子のカテゴライズ、遺伝子ネットワークの類推、パスウェイパップの作製等)を行う。④発現変動遺伝子の分析により候補遺伝子をさらに絞り込み、性転換過程において、それらの遺伝子についてリアルタイムPCRおよびin situ hybridization法により詳細な発現プロファイルを明らかにする。⑤生殖腺器官培養系による機能解析により類推された遺伝子ネットワーク・パスウェイマップを検証し、不可逆的な性転換を引き起こす因子・分子メカニズムの同定を目指す。
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