研究課題/領域番号 |
23248036
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
山下 倫明 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (80344323)
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研究分担者 |
藪 健史 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (00551756)
山下 由美子 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (50371852)
今村 伸太朗 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (80510007)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | セレン / 魚類 / 生体抗酸化作用 / グルタチオンペルオキシダーゼ / アポトーシス / セラミド / レドックス / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
クロマグロ血液からセレノネイン酸化型二量体を精製し,ブリ,マダイ,ゼブラフィッシュおよびマウスに投与し,セレン代謝および生体抗酸化作用へのセレノネインの関与を調べた。セレノネインは動物の各組織に検出されたが,とくに赤血球に蓄積し,セレン含有酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ1が誘導された。セレノネインの投与によって血漿の活性酸素種濃度は低下し,生体抗酸化作用の向上効果が確認された。セレノネインを強化したブリではヘモグロビンの酸素解離曲線が右方シフトし,低酸素適応能が向上したことから,ヘムとの会合が考えられた。セレンの安定同位体セレン-76および放射性同位体セレン–75の亜セレン酸をゼブラフィッシュ胚の培地中に投与したところ,胚抽出物中に同位体で標識されたセレノネインが検出されたことから,生体内でセレノネインは生合成されることが明らかとなった。セレノネインとアポトーシスとの関連性も明らかにした。スフィンゴミエリナーゼ1は,還元型のセレノネインおよびグルタチオンによって阻害される一方,セレノネインおよびグルタチオンが消耗した状態の酸化ストレス条件では,in vitroおよびin vivoの両方で本酵素が活性化し,セラミドが生成されるとともに,ストレス誘導性JNキナーゼによるリン酸化が生じ,アポトーシスが誘導されるシグナル経路を見いだした。セレノネインは細胞内レドックス応答のセンサーとして作用する可能性が推定された。セレン-75で標識された放射性セレノネインを魚類胚から精製することが可能となり,放射性セレノネインを含む培地を用いて,セレンタンパク質の生合成を解析した結果,セレノネインはセレンタンパク質の生合成のセレン源として利用されることが明らかとなり,セレノネインはセレン代謝において,重要な役割を果たしていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
動物試験を実施し,セレノネインが関与する代謝経路,セレノネインの生合成経路およびシグナル伝達経路に関する新知見が得られた。セレノネインの標識化合物が開発されたことによって,セレン代謝を解析するための新しい研究ツールが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
セレノネインの機能性解明のため,セレノネインの大量調製法および標識化合物の合成を開発する必要がある。セレン代謝に関する新知見が得られたことによって,セレン代謝に関連する未知遺伝子の解析が必要である。
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