研究課題/領域番号 |
23248036
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
山下 倫明 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (80344323)
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研究分担者 |
藪 健史 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (00551756)
山下 由美子 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (50371852)
今村 伸太朗 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (80510007)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | セレン / 魚類 / 生体抗酸化作用 / グルタチオンペルオキシダーゼ / アポトーシス / セラミド / レドックス / ゼブラフィッシュ |
研究概要 |
魚介類は重要なセレン源であることから,その生物活性や栄養学的な有効性を明らかにする必要がある。日本人の1日あたりのセレン摂取量は約100 マイクログラムであり,魚介類からのセレンの摂取は,他の食品と比べてもっとも多いことが知られている。魚介類組織のセレン含量を調査した結果,可食部には0.12~1.3 mg/kg程度含まれており,マグロ類やサバ類など海産魚の可食部には2-selenyl-Nα,Nα,Nα-trimethyl-L-histidine(セレノネイン)が多く含まれていた。魚食頻度の高い離島住民では赤血球の総セレン含量平均値0.51 mg/kg(n=167),セレノネイン含量平均値0.21 mg Se/kgであった。以前の日本人の報告例と比べ赤血球セレン含量は2倍以上高いレベルにあった。魚食の頻度の高い場合に,赤血球セレノネイン含量が高いことから,セレノネインは魚介類中心の食事によって,生体内に取り込まれ,とくに赤血球に濃縮して蓄積すると推定された。赤血球セレノネイン含量はメチル水銀含量およびn-3PUFA含量との間に正の相関関係が見られた。赤血球のセレン/メチル水銀モル比は,3.5から 81 (平均約42)であった。セレノネインによるメチル水銀の解毒作用が反映された結果であると推定された。セレノネイン特異的なトランスポーターOCTN1によってセレノネインは赤血球に取り込まれることから,赤血球セレノネインは,抗酸化のバイオマーカーとして利用できる。 放射性Se-75で標識した亜セレン酸ナトリウムを培地に添加して,ヒトJurkat T細胞およびゼブラフィッシュ胚を培養したのち,メタノール抽出物をTLCで分画した結果,動物細胞におけるセレノネインの生合成およびタンパク質合成が確認された。今後,セレノネインを介するセレン代謝経路および生体抗酸化作用を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
セレン代謝,抗酸化およびセレンタンパク質遺伝子発現に関わる新知見が得られた。セレノネインがセレンの栄養学的な機能を果たす上で必須の化学形態であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト細胞でのセレノネインの生合成が確認されたことから,セレノネインの生合成経路を阻害するバイオアッセイによって,セレン欠乏症を再現することによって,生体抗酸化作用におけるセレノネインを必須性を検証する試験を実施する予定である。
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