研究課題/領域番号 |
23248050
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀内 基広 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (30219216)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10193559)
長谷部 理絵 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 講師 (70431335)
佐々 悠木子 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 博士研究員 (20582464)
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キーワード | ミクログリア / プリオン / 自然免疫 / サイトカイン |
研究概要 |
プリオン病は、中枢神経系における異常型プリオン蛋白質の蓄積、神経細胞の変性、アストロサイトおよびミクログリアの増生を特徴とする、致死性の神経変性疾患である。ミクログリアは神経組織で神経細胞の活性の監視、異物除去、自然免疫の調節などに関わる多機能細胞である。ミクログリアの増生はプリオン病の神経病変の特徴の一つであり、ミクログリアの活性化はプリオン病の病態の進行に関与すると考えられるが、その作用はほとんど判っていない。そこで本研究では、プリオンの増殖に対するミクログリアの反応、ミクログリアで発現する分子群、およびミクログリアの機能を詳細に解析して、プリオン病の神経病態とミクログリアの関係を明らかにすることを目的とする。 プリオン接種後早期からPrPScが検出される脳の部位を調べたところ、Chandler株感染マウスでは、プリオン接種後30日から延髄でPrPScが検出され始め、視床では接種後45日から検出され始めた。PrPScと細胞マーカー分子との蛍光二重染色により、感染後早期に検出されるPrPScの大部分が、前シナプス領域のマーカー分子であるSynaptophysin陽性となる領域の近傍に位置することが判明した。Chandler株感染マウスの視床では、接種後45日にGFAP陽性アストロサイトの増生を認め始め、その後Iba-1陽性の活性化ミクログリアが検出されるようになった。凍結連続切片の蛍光免疫染色とタイルスキャン画像取得による、広範囲かつ高倍率の画像取得により、アストロサイトの活性化がミクログリアの活性化よりも先に起こることは、感染後早期から実際にPrPScが存在する局所でも確認できた。これらの結果から、アストロサイトがプリオンの増殖あるいはプリオンの増殖により生じる神経細胞の微細な変化を認識し、その後ミクログリアが活性化するという感染初期における神経病態の一端が明らかとなった。脳組織から酵素消化、密度勾配遠心、および磁気細胞分離を組み合わせ、Cd11b陽性ミクログリアを4時間程度で分離することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室で作製した抗体を用いるPrPSc特異的染色法を凍結切片に応用して、脳組織でPrPScの蓄積が早期から認められる部位を同定し、シナプス近傍でPrPScの蓄積が検出され始めること、その領域ではまず、アストロサイトの活性化がおこり、遅れてミクログリアが活性化することを明らかにした。また、脳組織から酵素消化、密度勾配遠心、および磁気細胞分離を組み合わせ、ミクログリアを4時間程度で分離することが可能となったので、今後、遺伝子発現の解析により、ミクログリアの活性化状態を区別する実験を開始する。従って、研究は順調に進んでおり、概ね当初計画を達成したと考えている。また、平成24年度の研究に向けて、必要技術の確立も順調に進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、脳組織内でPrPScが早期から蓄積する細胞内小器官を凍結切片の蛍光多重染色により解析する。また、ミクログリアの遺伝子発現解析が可能になったので、定量RT-PCRにより遺伝子発現を調べて、ミクログリアの活性化状態を解析する。また、ミクログリアで遺伝子発現が上昇している因子の発現を、免疫組織化学により解析する。
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