研究課題/領域番号 |
23248050
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀内 基広 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (30219216)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (10193559)
長谷部 理絵 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 講師 (70431335)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プリオン / ミクログリア / CD14 / 自然免疫 / IL-10 / IL-17 |
研究概要 |
プリオン病は、中枢神経系における異常型プリオン蛋白質の蓄積、神経細胞の変性、アストロサイトおよびミクログリアの増生を特徴とする、致死性の神経変性疾患である。ミクログリアの増生はプリオン病の神経病変の特徴の一つであり、ミクログリアの活性化はプリオン病の病態の進行に関与すると考えられるが、その作用はほとんど判っていない。そこで本研究では、プリオン病の神経病態とミクログリアの関係を明らかにすることを目的とする。 当研究室ではこれまでに、CD14欠損マウスでは、野生型マウスに比べて、プリオン感染に伴う生存期間が延長すること、感染初期では、CD14欠損マウスでミクログリアがより活性化することを報告してきた。そこで平成25年度は、プリオン感染CD14欠損マウスの脳におけるミクログリア活性化状態の詳細な解析を行った。プリオン感染CD14欠損マウスでは、Iba-1やCD11bのミクログリアマーカーに加えて、ミクログリアマーカーとして使用されるCD68やF4/80の発現増加が認められた。また、感染初期の接種後60-75日の時点では、抗炎症性サイトカインとして知られるIL-10やTGF-bの発現が高く、炎症性サイトカインであるIL-1bの発現が低下していた。また、興味深いことに、抗炎症性サイトカインであるIL-13の発現が接種後75日で一過性に増加し、その後、発現が殆ど認められなくなった。これらサイトカイン、ケモカインの発現パターンは、CD14欠損マウスでは、プリオン感染初期にミクログリアが一時的に炎症制御性のM2-typeにシフトすることを示唆している。これらの結果は、プリオン感染初期においてCD14分子は脳内の抗炎症性に作用する自然免疫応答を抑制することで、プリオン感染初期におけるプリオンの増殖を進める方向に作用することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はCD14欠損マウスにおけるプリオン病の神経病態を解析し、CD14分子が、プリオン感染初期で、自然免疫が抗炎症性状態にシフトすることを妨げることを明らかにした。また、感染初期に生じる抗炎症性状態の脳内環境により、プリオンの増殖が遅延することも明らかとなった。プリオン感染に伴う神経病態機構に関与する分子の一つとしてCD14の役割は、これまでに報告がない新知見であり、プリオン病における神経病態を理解する上で興味深い知見である。 従って、研究は順調に進んでおり、概ね当初計画を達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、プリオン感染マウス脳由来ミクログリアにおける遺伝子発現を次世代シークエンサー等を用いて網羅的に解析して、ミクログリアの機能に関連する新規分子の絞り込みを行う。また、プリオン感染マウス脳から分離したミクログリアの貪食能、およびプリオン感染初代神経培養細胞に対する障害作用など、ミクログリアの機能解析を進める。
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