研究課題/領域番号 |
23248051
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今内 覚 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (40396304)
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研究分担者 |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (90250498)
田島 誉士 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (90202168)
村田 史郎 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教 (10579163)
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キーワード | 牛白血病 / 牛白血病ウイルス / 伝播リスク / ウイルス定量 / 清浄化モデル / プロウイルス / リンパ球数 / 免疫抑制 |
研究概要 |
平成23年、北海道大学大学院獣医学研究科は79件、4121頭の牛白血病ウイルス感染診断を行なった。依頼主の一つであるA農場で牛白血病が発生したため、担当獣医師より依頼を受け、従業員および農場関係者を対象とした牛白血病に関する対策講習会を行なった。その後、畜主および担当獣医師との対策協議を行ない、ウイルス感染全頭検査(約300頭)を行なうこととした。その結果、成牛で30頭(陽性率10.9%)と育成牛で15頭の感染牛が見つかった。感染牛の履歴を調べた結果、感染牛の11頭の母牛が感染牛であったことから、垂直感染によるウイルス伝播が推察された。そこで以下のことを実施した。1)牛白血病ウイルス感染全頭検査を行った。また、陰性牛は継続して検査を行った。2)ウイルス感染牛を隔離した。3)牛の動線をもうけ、搾乳は(1)ウイルス陰性牛、(2)乳房炎牛、(3)ウイルス陽性牛の順で行った。4)初乳ならびに全乳に対する加温殺菌(56□-30分)を行い、出生子牛の哺乳管理を徹底した。5)出血を伴う処置の使用器具やロープの洗浄・消毒を徹底した。6)感染牛の分娩時の出血に対する消毒に注意を払った。7)生産性を考慮した感染牛の淘汰を行った。対策実施後、10頭の陽転牛が発生したが、その陽転率は2.8%と非常に低く、畜主らが行なったこれらの対策が非常に有効であったことが示唆された。現在この農場では、ウイルス感染を含めた総合要因(生産性や受胎率の低さなどを優先的に考慮)を考えた淘汰を実行し、感染牛の清浄化に進んでいる。牛白血病対策に尽力し清浄化に着実に進んでいる同農場は、本病に対する非常に有用なモデルであると考えられた。現在、さらに淘汰順位を考慮するための感染ウシにおけるウイルス保有量の調査をReal-time PCR法およびシンシチウムアッセイ法により行なっている。今後、その他の農場でも対策実施を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モデル農場において牛白血病に対する対策を実施することで、ウイルス感染の拡大を阻止することに成功した。尚、Real-time PCR法による牛白血病ウイルス定量法は既に樹立に成功し、誌上発表した。
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今後の研究の推進方策 |
モデル農場において牛白血病に対する対策を実施することで、ウイルス感染の拡大を阻止することに成功したが、どの要因がウイルス伝播阻止に重要かは明らかでない。今後、伝播ルート等を解析することでリスク評価を実施したい。また、本感染症がもたらす生産性や免疫状態への影響をウイルス動態の詳細を解析することで評価したい。
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