研究課題
平成24年、北海道大学大学院獣医学研究科は67件、2329頭の牛白血病ウイルス感染診断をnested-PCR法によって行い陽性率は7.5%であった。検査結果はモデル農場などにおいて新規導入牛の決定、感染牛の分離飼育、優先淘汰および感染牛産出(帝王切開を含む)の子牛の早期感染検査などに活用された。モデル農場A(乳牛飼育):平成22年に全頭の牛白血病ウイルス感染診断を実施した結果、453頭中6頭(1.3%)が陽性だったため感染牛全頭の淘汰を敢行した。平成24年に継続検査を行った結果、548頭中3頭(0.5%)が陽性を示した。これらの陽性牛3頭すべては、平成22年に行った検査当日または前日に牛白血病ウイルス感染母牛から生まれた若牛で当時、若齢のため検査を行っていなかったため感染母牛からの垂直感染牛だったことが示唆された。平成24年の検査後、感染牛全頭の淘汰を敢行し清浄化が達成された。モデル農場B(乳牛飼育):全頭(約300頭)の牛白血病ウイルス感染診断を実施し、陽性牛と陰性牛の分離飼育を行ったモデル農場で陰性牛の陽転率をモニターしその原因について考察した。陽転牛の一部は夏期の預託放牧履歴を持つ牛に認められたため混合飼育中の水平伝播が疑われた。他の陽転牛はすべて夏期に認められ冬期には陽転は認められなかった。このことから昆虫類による水平感染が疑われた。モデル農場C(乳牛飼育):種々の陽転防止衛生対策を既に実施しているのにも関わらず、牛白血病ウイルス感染陰性牛の陽転率が高いモデル農場においてサシバエが大量に発生していることが明らかとなった。そこで同農場でサシバエを採取しPCR法による牛白血病ウイルスかの検出を試みた結果、19匹中12匹から吸血歴を示す牛の遺伝子が検出され、さらに7匹から牛白血病ウイルスが検出された。このことから本農場ではサシバエによる感染拡大が疑われた。
1: 当初の計画以上に進展している
モデル農場において感染牛の継続的摘発淘汰で清浄化に成功した。また、牛白血病に対する対策を実施することで、ウイルス感染の拡大を阻止することに成功した。モデル農場で認められた陽転牛については感染経路を探求しサシバエなどのベクターまたは預託放牧等時の混合飼育がリスクファクターとして考えられた。
H24年度の調査によって、牛白血病ウイルス感染陰性牛の陽転率が高いモデル農場においてサシバエが大量に発生していることが明らかとなった。さらに同農場で採取したサシバエより高率で牛白血病ウイルスが検出された。同農場では種々の陽転防止衛生対策を既に実施していることか らサシバエによる感染拡大が疑われた。そこで本年度はサシバエ対策による感染伝播阻止効果をモデル農場で実施し評価する。モデル農場において牛白血病に対する対策を実施することで、ウイルス感染の拡大を阻止することに成功したが、どの要因がウイルス伝播阻止に重要かはまだ明らかでない。今後、伝播ルート等を解析することでリスク評価を実施したい。また、本感染症がもたらす生産性や免疫状態への影響をウイルス動態の詳細を解析することで評価したい。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 11件) 図書 (1件)
Comp. Immunol. Microbiol. Infect. Dis.
巻: 36 ページ: 63-69
10.1016/j.cimid.2012.09.005.
日本獣医師会学会学術誌
巻: 66 ページ: 171-179
Vet. Res.
巻: 43 ページ: 45
10.1186/1297-9716-43-45.
北海道獣医師会雑誌
巻: 56 ページ: 1-7
酪農ジャーナル
巻: 8 ページ: 15-18
臨床獣医
巻: 5 ページ: 45-49
動物用ワクチン-バイオ医薬品研究会ニュースレター
巻: 5 ページ: 27
巻: 8 ページ: 60-62
巻: 9 ページ: 60-62
巻: 10 ページ: 40-42
巻: 11 ページ: 50-52