研究課題/領域番号 |
23248052
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
南澤 究 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (70167667)
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研究分担者 |
信濃 卓郎 (独)農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上席研究員 (20235542)
池田 成志 (独)農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・芽室研究拠点, 主任研究員 (20396609)
山下 明史 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教 (00573180)
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キーワード | 植物マイクロビオーム / メタゲノム解析 / 物質代謝 / 植物共生微生物 / 根圏微生物 |
研究概要 |
窒素施肥レベルの異なる圃場で栽培した水稲の地上部と根圏に共生する細菌の多様性をメタゲノム解析により行った。低窒素区と慣行区で細菌群集構造に差が見られた。Alpha proteobacteria中では、ダイズ根粒菌や光合成茎粒菌と近縁なBradyrhizobium細菌と、メタン酸化を行うMethylosinusに近縁な種が特に増加していた。また、Betaproteobacteriaでは、低窒素区でBurkholderia kururiensisが極端に多く、相対存在量は低窒素区で26.8%、慣行施肥区で1.1%であった。植物生育促進のacdS遺伝子、メタン酸化のpmoA遺伝子が低窒素区で多かった。通常大気(Ambient)及び二酸化炭素濃度増加条件(FACE)2つの栽培条件下で慣行栽培区、加温区(ET)と低窒素区(LN)の3つの処理区で栽培した水稲の微生物群集構造の解析も行った。環境変化による種々の微生物群の変動が見られた。また、絶対嫌気性細菌群のクロストリディウム属細菌がイネ地上部葉身に存在し、Planctomycetesが葉鞘部分に存在することが明らかになった。以上の解析により、水稲体の共生微生物ではメタン酸化などC1代謝に関わる微生物が環境変化の影響を受け、且つ重要な役割を果たしていることが強く示唆された。リン酸分解能の異なる二つの土壌で栽培した植物根圏の土壌細菌遺伝子のメタゲノム解析を行い、PCR-DGGE法では明らかにされなかった処理間差が見いだされ、複数の遺伝子ファミリーの増減が認められた。また、機能性遺伝子の解析からは有機態リン化合物の分解に関与することが期待される複数の遺伝子に変動が確認された。また、イネ共生細菌の濃縮細胞の金属およびタンパク質の網羅的解析を行った。平成24年度はメタン酸化、窒素固定、リン酸溶解に関わると考えられる変動している微生物の分離によりこれらのトップダウンのデプローチの有効性を証明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主に水稲生態系のイネの地下部および地上部の微生物群集構造解析をベースにメタゲノム解析等を行い、窒素肥料、CO_2,温度上昇などの環境変化による微生物群集変化および変動機能遺伝子の解析より、メタンサイクル、難溶性リン酸可解化に関与する細菌の重要性が明らかになり、今後の研究方向性が示された。さらに提案した金属およびタンパク質の網羅的解析もデータ取得に成功し、現在データベースを変えながら計算中である。
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今後の研究の推進方策 |
植物共生微生物のメタゲノム解析の成否は、サンプル調製と情報解析がネックになると予想していた。しかし、これらの問題は研究実施の中でほぼ克服できている。植物共生微生物の多様性は、土壌微生物よりかなり低く、得られた結果から有効な情報が抽出できることが分かった。次の課題は、メタン酸化はpmoA,mmoXなどの遺伝子発現と^<13>Cメタンガス投与で、難溶性リン酸は文献情報に基づいた重金属の難溶性リン酸の可溶化など、鍵微生物の分離を軸に物質循環機能を明らかにする。また、FACE処理,低リン酸環境で栽培した植物の解析を続け、その微生物群集構造と機能遺伝子の消長をさらに明らかにする。植物共生細菌細胞の金属、タンパク質、DNAの網羅的解析のデータ統合化とそこから得られる新知見について整理を行う。
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