研究課題/領域番号 |
23248052
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
南澤 究 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70167667)
|
研究分担者 |
信濃 卓郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上席研究員 (20235542)
池田 成志 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (20396609)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 植物マイクロビオーム / メタゲノム解析 / 物質代謝 / 植物共生微生物 / 根圏微生物 |
研究概要 |
植物の養分吸収、根圏における物質循環を起こしている植物共生微生物の多様性とそれらの機能を明らかにするのが本研究の目的である。 つくばみらい市の地球温暖化研究用実験水田圃場で水稲の微生物群集構造解析を実施し、根の微生物群集構造はイネ生育ステージ、温度上昇、CO2上昇の環境変化で複雑に変化した。メタンフラックスは高CO2加温区で最も多かったが、その際に、Burkholderia属細菌、Methylosinus属とMethylocystis属のメタン酸化細菌が増える傾向が観察された。イネの地上部組織(葉・葉鞘)の共生細菌相もこれらの環境変動に対して敏感に反応した。 マメ科植物と根粒菌、植物と菌根菌の共生に必須な植物遺伝子がイネにも存在し、その一つのOsCCaMK変異体を低窒素圃場で栽培したところ、野生型イネの約2倍のメタンフラックスが観察され、イネ共生遺伝子がメタンサイクルに関連するイネ共生微生物を変化させ、その結果としてメタン発生を低下させている可能性が高い。15N標識窒素ガスを用いイネ根の窒素固定活性を測定し、10%のメタンガスを同時に投与したところ窒素固定活性は2倍以上上昇した。低窒素区の野生型イネ日本晴がOsCCaMK変異体と比較して、メタン添加で最も高い窒素固定活性を示し、イネOsCCaMK遺伝子がメタン酸化窒素固定を担っている微生物の存在や働きを高めている可能性が考えられる。 共生微生物が及ぼす植物による養分吸収の影響を明らかにするためにイオノーム手法を導入し、各種元素の吸収との関連性を解析した。根圏での共生微生物の関与と特に窒素とリンの関連について詳細に調査を行った。また、根圏におけるプロテオーム解析手法を用いて栄養条件の違いがもたらす根分泌物の違いの解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地球温暖化研究用実験水田圃場でイネの微生物群集構造解析を実施し、CO2、 温度、窒素施肥レベル、生育ステージなどの環境変化により、イネ地上部および根部に生息している微生物群集構造が鋭敏に変化することが明らかとなった。さらに、昨年度のメタゲノム解析から示唆された窒素固定とメタン酸化に着目し、イネ根の物質循環機能について工夫をして実験を行い、イネの共通共生遺伝子の一つであるOsCCaMKによりこれらの物質循環機能が変化することを明らかにすることができ、研究目的はほぼ達成した。今後、群集構造解析とイオノーム解析の詳細化と鍵微生物分離による証明実験を実施することにより本研究の全体の目的を達成できると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、植物共生細菌の群集構造解析とイオノーム解析の詳細化と鍵微生物の分離による証明実験を実施することにより本研究の全体の目的を達成できると考えられる。 イオノーム解析に関しては新たに共同研究者として参画する岡崎氏に担当を移し、土壌微生物のRNAレベルの発現解析を中心に進める。特に、土壌の環境変化との対応関係を明らかにするために一定のミクロコスム試験を組み合わせることで研究の進捗をはかる。 異なる施肥条件(慣行栽培+4種類の緩効性肥料)で栽培したイネの地上部及び地下部の全共生系についても多様性解析を行い、イネ共生系の多様な環境要因に対する群集構造変化の変動法則を見出す。また、水稲と畑作物との間の共生微生物相の比較解析も若干検討し、イネ共生系の特徴を明らかにする。 水稲生態系の鍵微生物と推定されたBurkholderia属細菌、Bradyrhizobium属細菌、Methylosinus属細菌の分離とイネへの接種実験等による機能証明を行う。
|