研究課題/領域番号 |
23248053
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
杉田 昭栄 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50154472)
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研究分担者 |
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
佐藤 雪太 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40271762)
加藤 和弘 東京大学, 農業生命科学研究科, 准教授 (60242161)
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90282384)
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キーワード | カラス / 飛翔 / GPSロガー / 行動 / 飛翔筋 / 住血寄生虫 |
研究概要 |
農村地帯におけるカラスの移動範囲について明らかにする カラスは高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫などの感染症の発生時には、カラスが病原体の拡散に関与する可能性が指摘されてきた。しかし、これまで農村地域におけるカラスの行動様式は明らかにされていない。そこで我々は、GPS data loggerを用い、畜産農家が幾つか存在する栃木県真岡市において、カラスの移動様式を記録・解析、および感染症の罹患状況を検査した。 捕獲した21羽のハシブトガラスにGPS data logger(GT-120)を装着放鳥した。13羽のカラスが2~10日以内に再捕獲されデータ回収できた。13羽中5羽についてトラップから約1~2km南方の畜産農家敷地内への飛行が確認できた。前者の5/13羽のうち、2羽は1時間程度の短時間滞在もしくは4箇所の牛舎を移動しながら一晩滞在していた。残りの3羽は特定の畜舎を中心に長期連続して滞在した様子が観察された。家畜の給餌時間帯においては特に畜舎周辺に滞在する傾向があることから、畜舎を餌場としていることが示唆された。 カラスの保有病原体を網羅的に明らかにし、対象病原体を特定して伝播経路を明らかにする 野生のハシブトガラスの住血原虫の保有状況を明らかにすることを目的として、定期的に捕獲し原虫の感染状況を調査した。ハシブトガラス268羽のうち、Haemoproteus原虫のみに感染していた個体は146羽(54.4%)、Leucocytozoon原虫のみに感染していた個体は13羽(4.9%)、Haemoproteus原虫とLeucocytozoon原虫に複合感染していた個体は13羽(4.9%)認められた。感染羽数は春から秋にかけて増加し冬に減少するという季節による有意な変動が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、主として以下の三つの柱がある。(1)カラスの飛翔範囲とその軌跡を見る。(2)保有病原体をみる。(3)飛翔筋について生理学的知見を得る。その中で特に、重点をおくのが飛翔の範囲とその軌跡についての解析である。現在、この飛翔に関する豊富なデータが取れ得だしている。具体的な飛翔距離、生活様式なども把握しつつある。したがって、概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
GPS data Loggerを用いた移動範囲の研究については、予想以上にデータの回収が進み、周年のカラスの行動を読み解くことが可能になりつつある。その一方でカラスの行動範囲が想定したよりもはるかに広いこともわかってきているために、当初「水田地域」「酪農地域」「果樹地域」などに区分して放鳥場所を変える予定であったが、現状からすると今の放鳥現場ですでに1羽のカラスがこのすべての地域を飛んでゆくことがわかってきた。そのため、調査地域を細かく区分することをやめて、関東平野以外に、山岳地帯に囲まれた長野県飯田市での調査を並行して進めるように展開している。 感染症については、かなり高率で住血原虫が確認されている。カラスの行動からも広域に畜産農家を餌場に飛来していることから、公衆衛生学的リスクが見えつつある。それゆえこの遺伝型を見極めて早急に病原性の有無を調べる必要性が高まっており、さらにはカラスの飛来先になる農家の家畜についても関係機関と協力して検査を進める方法で調整している。 平成24年11月17日には中間的な報告会を兼ねて、宇都宮大学内でカラスの研究シンポジウムを企画し、現時点までの知見をカラス対策を行う企業や行政、専門家と情報を共有する機会を設ける予定である。
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