研究課題/領域番号 |
23248053
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
杉田 昭栄 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50154472)
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研究分担者 |
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
加藤 和弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60242161)
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90282384)
佐藤 雪太 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40271762)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カラス / 飛翔軌跡 / GPSロガー / 大腸菌 / 保有寄生虫 |
研究概要 |
(1)GPSロガーによるカラスの飛翔に関する研究:実験後得られた飛翔地点の内、果樹園および畜舎上に記録されたものを「果樹区分」、「畜舎区分」と分類した。行動範囲の最も大きいものは5日間で30.8km、小さいものは8日間、 1.6km離れた牛舎間を往復し続ける行動が記録された。農業被害に着目して「畜舎区分」「果樹区分」の動向に注視した場合、8月から2月の夏から冬にかけては「果樹区分」が現れ、特に8月、12月は高くなった。一方「畜舎区分」については、一年を通じて高い傾向があるが、特に6月の5時台については記録された54.7%が「畜舎区分」に分類された。 (2)保有寄生虫に関する研究:各個体から採血してDNAを抽出し、鳥マラリア原虫(Plasmodium spp.)、Haemoproteus およびLeucocytozoon 原虫のミトコンドリアDNA cytb 領域を標的としたnested-PCR(Hellgren et al., 2003)を行い、増幅された塩基配列を既知の鳥類血液原虫系統と比較して分子系統解析を行った。また、各個体の行動は、放鳥して再捕獲された個体からloggerを回収してデータを解析し、移動状況を推定した。すべてが、Haemoproteus属とLeucocytozoon属原虫に混合感染していた。また、ある個体では検出されるHaemoproteus属原虫系統の変化が確認された。 (3)腸内細菌相に関する研究:3羽からそれぞれ1万以上の塩基配列情報が得られ、それらの情報を基に130の操作上の分類単位へと各塩基配列を振り分けた。その結果、各カラスの塩基配列数の少なくとも70%が一つの分類単位へと分類され、3羽に共通して分類単位の塩基配列情報は原生動物に属するアイメリア属(Eimeria sp.)のものとほぼ一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進行は概ね順調である。これまでに、ロガー382個を装着した内235個を回収した。これによりデータを回収できたハシブトガラス98個体の内、56.1%が1回の放鳥実験のみで回収できなくなったが、1羽については24回放鳥に成功した。行動範囲の最も大きいものは5日間で30.8km、小さいものは8日間、 1.6km離れた牛舎間を往復し続ける行動が記録された。農業被害に着目して「畜舎区分」「果樹区分」の動向に注視した場合、8月から2月の夏から冬にかけては「果樹区分」が現れ、特に8月、12月は高くなった。一方「畜舎区分」については、一年を通じて高い傾向があるが、特に6月の5時台については記録された54.7%が「畜舎区分」に分類された。この結果、当初カラスの飛翔軌跡を知るという目的に到達bしている。また、地域性の違いについても栃木県真岡市、長野県飯田市の2拠点から十分なデータがでており、この点についても順調である。 病原体についても、寄生虫の種類、大腸菌の種類など同定が順調である。大腸菌については、すでに国際誌にも発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今回、感染個体の移動の軌跡を追跡することにより、病原体(原虫)が他個体への伝播している可能性が時系列的に初めて示された。このように、宿主の行動範囲を明らかにすることにより、病原体伝播様式の解明や感染リスク評価に役立つ情報が得られるとことが可能性が高い。この点について伝播様式を中心に解明を進める。 行動の面では、ハシブトガラスは育雛期もしくは巣立の時期である5月6月に畜舎依存が高いことから、農村部においては畜舎が最適な餌場にしていることが示唆された。また梨、ブドウ、栗の収穫期以降になると「果樹区分」が大きくなることから、果実を充分に得られない時期に家畜餌を補完的に利用している可能性が考えられたため、畜舎内での行動を定点カメラなどと併用し研究を展開する。
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