研究課題/領域番号 |
23249004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浦野 泰照 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20292956)
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キーワード | ルシフェラーゼ / ルシフェリン / エネルギー共鳴移動 / 近赤外蛍光 / 光増感剤 / インビボ / プローブ |
研究概要 |
本年度はまず、アミノルシフェリンのアミノ基にリンカーを介して種々のアクセプター蛍光団を導入した誘導体を数多く合成し、発光基質として認識される要件を探る実験を行った。具体的には、リンカーの長さ、蛍光団の大きさ、電荷、方向性などを変化させた基質を合成し、そのルシフェラーゼ基質としての評価を行った。その結果、一定以上の長さのリンカーを介して、BODIPY、フルオレセイン、ローダミン、シアニンなど種々の蛍光団を導入した基質は、反応速度は遅いものの、ルシフェラーゼ基質として機能することが明らかとなった。実際、Cy7をBRETアクセプターとして導入した基質では、800nmを超える近赤外発光が観測され、従来は全く報告のない近赤外生物発光システムを構築することに初めて成功した。 生細胞・動物応用を考える際には、プローブの細胞内局在とルシフェラーゼの局在が一致する必要がある。そこで、核、ミトコンドリア、ER、サイトゾルにそれぞれルシフェラーゼを発現・局在させた細胞も本年度作成した。震災の影響や、研究室立ち上げ工事が遅れた関係で、購入予定であった顕微鏡システムの導入が年度末となってしまったものの、導入した観測システムを用いて、生細胞系での発光イメージング実験を開始した。アクセプター蛍光団を指標とする蛍光イメージング実験も同時に行い、プロープ基質は分子構造によって大きく異なる局在を見せることがこれまでに明らかとなった。 小動物個体内の各種応答をin vivo検出可能な機能性発光イメージングプローブの開発に関しては、スルホン酸をアルキル基を介してアミノ基に導入したルシフェリン誘導を合成し、そのin vitro系、細胞系でのアッセイを行った。その結果、本基質は細胞膜非透過性であり、実質的に細胞系での発光を0に押さえることが可能であることが示された。ここから、本骨格を用いた機能性プローブの設計が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子内BRETを原理とするルシフェリンプローブの開発に成功しただけでなく、ルシフェラーゼ基質として機能させるための種々の因子を決定できたことは、今後の機能性プローブ設計の際に、大きな力を発揮するものと期待できる。また初年度に、各種ルシフェラーゼ発現細胞を複数種構築できたことも、今後の研究進展を考える上で大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
開発に成功した近赤外発光ルシフェリン基質を生細胞系、動物個体系へと適用し、in vivoでの近赤外生物発光システムの構築を狙った研究を継続する。またactivatable発光プローブに関しては、スルホン酸、カルボン酸の存在による細胞膜透過性の制御に基づく、活性酸素検出ルシフェリンプローブを開発し、その生細胞系での機能の検証を行う。
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