研究課題/領域番号 |
23249004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浦野 泰照 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20292956)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 生物発光 / ルシフェラーゼ / ルシフェリン / エネルギー共鳴移動 / 近赤外蛍光 / 光増感剤 / インビボ / プローブ |
研究概要 |
昨年度までに確立した分子内BRETを原理とする近赤外発光ルシフェラーゼ基質設計法に基づき、本年度新たにSiローダミン類、Cy7-COOMe、BODIPY 650を有する生物発光基質を開発した。まず生細胞系での検証から、これら三種の基質は全て十分な細胞膜透過性を有し、ルシフェラーゼとの反応によって特徴的な長波長発光を示すことが明らかとなった。例えばCy7-COOMeをBRETアクセプターとして導入した基質では、細胞外に基質を添加することで、800 nmを超える近赤外生物発光が観測された。次に、各基質由来の生物発光の組織透過性の比較を行った。具体的には生ハムを重ねることで均一の厚みを持つ擬似的な組織を作成し、各基質とルシフェラーゼとの反応によって生成する生物発光の組織による減弱を測定した。その結果、通常のルシフェリンと比較して、Cy7-COOMe-ALでは組織による発光強度の減弱は約1/6程度であり、深部からの発光観測に優れた基質であることが明らかとなった。最後に本基質類をマウスに適用した結果、確かにin vivoで近赤外発光を示すことが明らかとなった。以上の成果はAngew. Chem. Int. Ed.に掲載され、また注目すべき論文としてHot paperに選ばれた。 次に、分子内光誘起電子移動による生物発光制御(BioLeT)法を原理として、他の研究プロジェクトで本年度開発することに成功した活性酸素(hROS)検出生物発光プローブAPLに、さらに各種置換基を導入することで、細胞膜透過性やROSとの反応性に変化が出るかを検討した。その結果、アルキルスルホン酸基を導入した新規APL誘導体は、ROSとの反応前の生物発光効率が極めて低く、またROSとの反応効率も高く、より大きなシグナルの変化を有する優れたhROSプローブとして機能することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子内BRETを原理とする世界初の近赤外発光ルシフェリンプローブの開発に成功し、これが生細胞系だけで無く、in vivoマウス系でも機能することが明確に示された。また組織による発光の減弱という観点からも、従来の可視光発光プローブに対する明らかな優位性を持つプローブの開発に成功した。さらに、特定の応答をin vivoで検出可能な”activatable”生物発光プローブの開発に関しても、他の研究プロジェクトで確立された設計原理と相乗的に機能する新たな分子修飾法を見出すことに成功した。これらの結果は、当初計画以上の成果であり、最終年度の研究進展を考える上で大きな意味を持つ成果である。
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今後の研究の推進方策 |
機能性発光イメージングプローブ開発に関しては、従来基質に比べてS/N比が飛躍的に向上した新規プローブを、BioLeTと細胞膜透過性を精密に制御することで開発していく。機能性摂動プローブに関しては、ルシフェラーゼを発現させること自身が多少細胞へのダメージとなることが本年度の予備検討から明らかとなったので、細胞殺傷では無く、特定細胞への瞬時薬物刺激を実現する摂動系に注力して、その開発を行っていく。
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