研究概要 |
本年度は、これまでの研究で確立することに成功した、プローブ分子内電子移動による生物発光消光(BioLeT)を動作原理とする、全く新たな一酸化窒素(NO)プローブの開発を行った。具体的には、NOと反応することによってtriazoleを形成し、そのHOMO energy levelが大きく低下することが知られている1,2-diaminobenzene部位を発光団近傍に組み込んだルシフェリン誘導体(DALs)を開発した。その結果、DAL4はNO選択的かつ反応させたNOの量と比例して、BioLeTの解除に伴う大きな発光上昇を示すことが明らかとなり、さらに生細胞イメージングにも応用可能であり、ラット腹腔内でNO徐放剤から発生するNOを剃毛・開腹することなく可視化することにも成功した。以上の様に、BioLeTに基づく戦略により、従来は開発不可能であった生物発光プローブを論理的に開発可能であることが明らかとなった。 さらにこれまでに開発に成功してきた、高い反応性をもつ活性酸素種 (hROS)を特異的に検出可能な生物発光プローブAPLに関しても、新たな戦略の基づく感度の劇的な改良を行った。APLもBioLeTの解除によって発光上昇を示す生物発光プローブであるが、プローブ由来のバックグラウンド発光が大きいため、luc TGラット急性腹膜炎モデルで好中球から発生するhROSをin vivoで検出することは困難であった。そこで、基質の細胞膜透過性も同時に制御することで、バックグランド発光を大きく低減させる戦略で、プローブの高感度化を目指した。具体的には、APL中のaminophenoxy部位のamino基をスルホアルキル化したSO3H-APLを開発した。その結果、SO3H-APLは生細胞中において、約1/100の量のhROSをAPLと同じactivation ratioで検出あることがわかり、実際にluc TG ratの急性腹膜炎モデルにおいても、刺激に応じて好中球から発生するhROSを剃毛・開腹することなく明瞭に検出可能であることが明らかとなった。
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