研究課題/領域番号 |
23249005
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
奥 直人 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10167322)
|
研究分担者 |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (90145714)
清水 広介 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30423841)
|
キーワード | 虚血性疾患 / リポソーム / 薬物送達 / DDS / エリスロポエチン / 細胞保護効果 / 行動薬理 / 脳梗塞 |
研究概要 |
虚血性疾患において虚血時や再灌流後には血管透過性が亢進することから、DDSナノ製剤が有効に働く可能性がある。これまでに栓子法による一過性中大脳動脈閉塞(t-MCAO)モデルラットを用い、100nm径のリボソームがラット脳虚血再灌流部位に、再灌流直後から集積することを見出した。すなわち、リポソームにより薬剤を早期に虚血部位、再灌流部位に送達することにより、虚血再灌流障害の治療が可能と考えられる。そこでリボソームに、脳神経細胞受容体に結合し細胞保護効果を示すアシアロエリスロポエチン(A-EPO)を修飾し、受容体結合を利用した標的能と治療効果を併せ持つ画期的脳血管障害DDS治療薬を開発することを目的に検討を進めた。一過性中大脳動脈閉塞(t-MCAO)モデルラットを用い、蛍光標識した種々の組成のリボソームの再灌流後における血管外集積を検討した。同時にTTC法により脳細胞死を測定し、血管透過性亢進が脳虚血再灌流の初期に起こることを確認した。A-EPOは細胞保護効果が知られているが、血中消失が極めて速い。そこでA-EPOによりリボソーム膜を修飾し、DDS製剤化を行った。リポソーム化A-EPOの細胞保護効果についてはNGFで神経細胞に分化させたPC12細胞を用い、A-EPO修飾リボソームの有用性を検証した。t-MCAOモデルラットを用いて、A-EPOリボソーム製剤の投与による脳浮腫の抑制、脳細胞死の抑制、疾患部位の脳血流の経時的変化について検討した。A-EPOリボソーム製剤は尾静脈内投与で十分に脳に分布し、BBBの破綻による脳虚血再灌流部位への集積が確認できた。脳虚血再灌流障害では、脳機能障害を基としたラットの行動異常、すなわち神経病理学的障害が現れることが知られている。そこでA-EPOおよびA-EPOリボソーム製剤を用いて、t-MCAOモデルラットにおける行動薬理学的検討を行った。神経病理学的障害をA-EPOリボソーム製剤がある程度抑制できることを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アシアロエリスロポエチンリポソームに高い脳保護効果を見出し、脳虚血再灌流障害治療への有効性を明らかにした。本研究成果はすでにJ. Control. Releaseにin pressとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
実際の臨床応用を考慮した製剤学的工夫を追加していく。また本研究のもう一つのテーマである、脳虚血部位のイメージングを成功させTheranosis(Therapy&Diagnosis)の手法を提案できるようにする。
|