研究課題/領域番号 |
23249006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 洋由 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (40167987)
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研究分担者 |
井上 貴雄 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (50361605)
河野 望 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (50451852)
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キーワード | リン脂質 / アシルトランスフェラーゼ / 高度不飽和脂肪酸 / 生体膜 |
研究概要 |
生体膜を構成するリン脂質には、飽和脂肪酸から高度不飽和脂肪酸(PUFA)まで様々な脂肪酸鎖が結合し、生体膜の疎水的環境を形成しているが、その多様性の生物学的意義および疾患との関連はほとんど解明されていない。申請者は最近、それぞれのリン脂質に対する脂肪酸導入酵素が存在し、それらにより生体膜のリン脂質脂肪酸鎖が規定されている事を明らかにした。本研究では、これらの成果をもとに、膜リン脂質脂肪酸組成の維持機構とその破綻による病態の解明を目的とし、特に本年度は「膜リン脂質中の特定の脂肪酸鎖環境を必要とする細胞現象の解明」について研究を行った。線虫は18:1(オレイン酸)から20:5(EPA)のようなPUFAまで様々な不飽和脂肪酸を合成できる。また、培地に加えた外来性のPUFAも取り込んで利用できる。線虫ではPUFA合成酵素はすべて同定されており、その多重欠損変異体では培地に加えたPUFAは取り込まれても代謝されず、そのまま膜リン脂質の脂肪酸鎖として利用される。申請者はこの変異体を独自に樹立し、PUFAの生物機能を個々の脂肪酸レベルで調べるユニークなアッセイ系を構築した。このPUFA欠乏線虫では、上皮系組織の形成異常を示すことも見出しており、この異常がどのPUFAで回復できるか(言い換えれば、どのPUFAを必要とするのか)を調べた。その結果、上皮系組織の形成異常は20:4(ω6)と20:5(ω3)では回復するが、20:4(ω3)では全く回復できなかった。さらにリン脂質脂肪酸導入酵素の変異体との遺伝学的解析から、この現象にはボスファチジルイノシトール(PI)に上記のPUFAが存在することが必要であることも明らかとなった。すなわち、上皮系組織の形成にはPIに含まれるPUFAのカルボキシル末端からの二重結合の位置が非常に重要であることが明らかとなった。
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