研究概要 |
miR-122は、70%が肝臓で発現しているmiRNAであり、肝臓におけるコレステロール代謝や、脂肪酸の合成や酸化などに関与している。従って、細胞内でのmiR-122の制御異常は代謝性疾患の原因になる。そこで、肝臓で過剰発現しているmiR-122を、そのアンチセンス鎖(AMO-122)で作用を抑制することを考えた。AMO-122は細胞内でmiR-122と完全相補的二本鎖を形成し、miR-122がmiRISC上で対応するmRNAとの結合を阻害し、作用発現を阻害する。そこで、ヌクレアーゼ抵抗性ユニット(2’-OMe-4’-S体; MS,および天然型2’-OMe体; M)を含むAMO-122を合成し、その効果を調べた。miR-122のルシフェラーゼレポータープラスミドを調製し、このプラスミドとAMO(23mer, 0.5-5 nM)を、miR-122を高発現しているHuh-7細胞にコトランスフェクションし、24時間後にレポーターアッセイを行い、AMOによるmiR-122機能抑制効果を調べた。その結果、AMO-MS122は濃度依存的なmiR-122の抑制効果を示し、AMO-M122よりも高い効果が得られた。また、リン酸部分が天然のPO型の場合は時間経過とともに活性が現弱したが、チオリン酸型(PS)の場合は活性増強がみられた。そこで、AMO-MSPS-122をリポソーム(YSK05-MEND)に搭載し、マウスを用いるin vivo実験を行った。1.0 mg/kgを2日おきに三回静脈内投与後、肝臓を回収しmiR-122の標的酵素であるAldoA, Bcldk, Ndrg3の発現を調べたところ、いずれの酵素の発現が上昇しmiR-122の効果が低下したことを見いだした。さらに、血中コレステロール量も低下した。また、毒性の指標である血清中のALT量は大きく変化しなかった。
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