研究実績の概要 |
核酸医薬は組織選択性を持たないので何らかの組織標的化をしなければならない。今年度は、前立腺がんやがん新生血管に高発現しているPSMAを標的とするウレア型ジペプチド阻害剤(以下PSMAリガンド)を、1)エピジェネティクスで重要なCpG配列のメチル化酵素DNMT1をトラップできる5-formylCpGを含むデコイ核酸と、2)Stat 3に対するsiRNAに結合し、それらを用いてin vitro実験を行った。1)両末端にアセチレンを持ち、5-formylCpGを含むヘアピン型オリゴヌクレオチド(ODN)とtris(azidoethyl)amineをCuAAC反応で環化し(J. Org. Chem. 2013, 15, 694)ダンベル型ODN(1)とした。これに末端に歪んだアセチレン分子(DBCO)を持つPSMAリガンドをSPAAC反応で結合し標的型ODN(2)を合成した。HeLa細胞(PSMA非発現細胞)に対して1, 5-formylCpGを含む二本鎖DNA(3)、または、5-methylCpGを含む二本鎖DNA (4)を作用させ、それらのIC50値を求めると、41, 66, 245 nMであった。一方、PSMA標的化した2をLNCaP前立腺がん細胞(PSMA発現)とPC-3前立腺がん細胞(PSMA非発現)に作用させると100 nMでLNCaP細胞増殖を90%抑制したが、PC-3細胞では30%しか抑制しなかった。2)ブラントエンド型の19量体siRNAのセンス鎖3’末端にリンカーを介して先と同じPSMAリガンドをSPAAC反応で結合した。このsiRNAもPSMAを発現しているLNCaP細胞の増殖を効率よく抑制したが、非発現のPC-3細胞の増殖はあまり抑制しなかった。この差は、細胞増殖抑制効果よりもRTPCRによるStat3 mRNAの発現抑制で見る方が顕著であった。
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