研究課題
病原体の二回目以降の暴露に対して免疫反応を増強させるブースト反応が脊椎動物の適応免疫の特徴のひとつである。これまで、マルハナバチやショウジョウバエにおいて、致死量以下の病原体の暴露が病原体に対する抵抗性を導く現象が報告されているが、無脊椎動物の適応的な免疫機構を導く異物の実体、感染抵抗性を賦与する分子機構は明らかになっていない。本研究において我々はこれらの点の解明を試みた。グラム陰性菌の腸管出血性大腸菌(EHEC) O157:H7 Sakaiもしくはセラチア菌の熱処理菌体を前注射したカイコは、生理食塩水を前注射したカイコに比べてSakaiの感染に対するLD50値が100倍以上に上昇した。一方、グラム陽性菌の黄色ブドウ球菌の熱処理菌体を前注射したカイコはSakaiの感染に対する抵抗性を示さなかった。グラム陰性菌細胞表層の構成成分であるペプチドグリカンを前注射したカイコはSakaiに対する感染抵抗性を獲得したが、グラム陽性細菌のペプチドグリカンの前注射はカイコのSakaiに対する感染抵抗性を導かなかった。Sakai熱処理菌体を前注射したカイコは、変態して蛹になるまで持続してEHEC O157:H7 Sakaiに対する感染抵抗性を示した。Sakaiの熱処理菌体をカイコに注射すると、体液中に一過的に抗菌ペプチドが誘導された。Sakai熱処理菌体を前注射したカイコに対し再度Sakaiの熱処理菌体を注射すると、Sakai熱処理菌体を前注射していないカイコに比べて、抗菌ペプチドの誘導時期が早まり、抗菌ペプチドの産生量が増加することが見出された。以上の結果は、無脊椎動物のカイコにおいて、細菌の細胞表層のペプチドグリカンの再曝露を認識し、抗菌ペプチド産生量を増大させるブースト反応を起こすことにより、再度の細菌感染に対して抵抗性を導く免疫機構が存在することを示唆している。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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