研究課題
神経筋シナプスは骨格筋収縮の制御に必須であり、その異常は筋無力症の原因となる。代表者らは、独自に発見した「アダプター分子Dok-7による受容体型キナーゼMuSKの筋管細胞内からの直接の活性化」と言う全く新しい分子機構が、神経筋シナプスの形成・維持シグナルの起点となることや、DOK7遺伝子の異常が先天性筋無力症(DOK7型筋無力症)の原因となることを発見し、Dok-7/MuSKシグナルが神経筋シナプスの形成と維持に必須であることを解明した。これらの成果を踏まえ、本研究は神経筋シナプスの形成・維持の根幹をなすDok-7依存的な骨格筋シグナル経路に加え、運動神経と骨格筋の緊密な連携を支える未同定のシグナル経路の詳細を解明し、その破綻による疾病の理解と診断・治療基盤の形成を目指している。昨年度までの研究では、MuSKの共受容体であるLrp4の会合分子としてシャペロン分子Mesdc2を同定し、それがLrp4の筋管細胞表面での機能に必須であることを解明した。Lrp4は運動神経由来の糖タンパク質agrinの受容体分子であり、agrinとの結合によりMuSK活性化を誘導する。そこで、agrinとDok-7の2系統のMuSK活性化経路に関する解析を行った。その結果、Dok-7の過剰発現によるMuSK活性化はLrp4の非存在下でも誘導できることが判明した。さらに、agrin非存在下でも、Dok-7の過剰発現によるMuSKの強い活性化が誘導され、胎仔機のNMJ形成が強く誘導された。ところが、これらのNMJはMuSKの強い活性化が維持されているにも関わらず、出生後に消滅した。これらの知見から、agrinはLrp4を介したMuSK活性化以外の未知のシグナル経路により出生後のNMJ維持に機能していることが明らかになった。この発見は神経筋シナプスの新たな形成・維持機構と、その異常による新たな筋無力症病態の解明に道を拓く成果と言える。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/post_58.php