研究課題/領域番号 |
23249019
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 裕之 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30183825)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝学 / エピゲノム / DNAメチル化 / 小分子RNA |
研究概要 |
本研究課題は、ヒトのエピジェネティック修飾による遺伝子発現制御の基盤を明らかにするため、DNAメチル化パターンを決定するトランスの因子とシスの因子を同定することを目的としている。H24年度は当初の計画に沿って以下の研究を実施した。まず、(1)遺伝性DNAメチル化異常症ICF症候群の新規候補遺伝子ZBTB24(ジンクフィンガータンパク質をコードする)で同定した3つの変異を論文にまとめ投稿した。患者の細胞に正常遺伝子を導入して真の原因遺伝子か確定する予定であったが、ICF症候群患者のiPS細胞の入手が遅れたため(共同研究期間の手続上の問題による)、次年度に確定実験を行なう予定である。また、このタンパク質(メチル化導入のトランス因子の候補)が動原体付近のヘテロクロマチンに局在することを発見し、相互作用するタンパク質の同定・解析を開始したほか、ZBTB24ノックアウトマウスの作成に着手した。(2)メチル化異常を示すいくつかの胃がん、大腸がんの細胞株で、piRNA・siRNAがメチル化導入のトランス因子ではないことを論文にまとめる予定であったが、その過程で乳がん細胞におけるpiRNA・siRNAを調べる必要が生じたため、乳がんの2細胞株で解析を開始した。(3)ヒト・チンパンジーの21番、22番染色体について、末梢血白血球のMeDIP-Chipにより合計16領域の種間メチル化差異を同定し、その幾つかが遺伝子発現と相関することを論文にまとめ投稿した。さらに、種間メチル化差異の多くがジンクフィンガータンパク質CTCF結合配列の塩基の違いに起因することが明らかになり、メチル化状態を決める新たなトランス因子(CTCF)とシス因子(結合配列)が明らかになった。この研究をゲノムワイドに展開するため、MBD-Seqやバイサルファイト-Seqによる解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAメチル化パターンを決定するトランスの因子の候補としてZBTB24とCTCFという2つのジンクフィンガータンパク質を同定したこと、シスの因子としてCTCF結合配列を同定したことから、おおむね順調に計画が進展していると判断できる。現在2本の論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
PIWIファミリーが高発現しており、かつメチル化異常を示す複数の胃がん、大腸がんの細胞株においてpiRNA・siRNAが高発現していなかったことから、がんにおけるメチル化異常にpiRNA・siRNAが関与する可能性は低いと考えられたが、乳がん細胞株のデータを加えることで、より一般性をもたせた結論で論文にまとめることとした。ICF症候群については患者由来iPS細胞とノックアウトマウスを用いた研究が進行中であり、ヒト・チンパンジー間のメチル化差異についてはゲノムワイドな解析を実施中であるので、いずれもより精確で普遍性の高い成果が得られると考えている。
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