研究課題
本研究は、ヒトの細胞のDNAメチル化パターンを決定するトランスの因子とシスの因子を同定し、エピジェネティック修飾による遺伝子発現制御の基盤を明らかにすることを目的とした。最終年度は当初の計画に沿って以下の研究を実施した。まず、(1)遺伝性DNAメチル化異常症ICF症候群の原因遺伝子ZBTB24(ジンクフィンガータンパク質をコードする)で同定した3つの新規変異を論文として発表した(Nitta et al. 2013)。患者の細胞に正常ZBTB24遺伝子を導入して表現型の回復を試みる予定だったが、患者由来iPS細胞で低メチル化表現型が見られなかったため(未分化なため?血球では見られる)、ZBTB24ノックアウトマウスを作成し、サテライト配列が低メチル化となることを確かめた(卵黄嚢)。よって、この蛋白質がメチル化導入のトランス因子であることを確定した(未発表)。(2)がんにおいてpiRNA・siRNAが異常メチル化のトランス因子であるとの仮説を立て、メチル化異常を示す胃がん、大腸がん、乳がんの細胞株を調べたが、ポジティブな結果は得られなかった。しかし、仮説を否定するには至っていないので、引き続き検討することとした。(3)ヒト・チンパンジーの21番、22番染色体について、MeDIP-Chip法により16領域の種間メチル化差異を末梢血白血球で同定し、その多くが転写因子(CTCFなど)結合配列やタンデムリピート内の塩基置換に起因することを明らかにした(Fukuda et al. 2013)。すなわち、新たなトランス因子(転写因子)とシス因子(その結合配列やリピート)を同定した。この結果をゲノムワイドなメチル化解析により確認した。以上により、ヒトの細胞のメチル化パターンを決定する2つ新規トランス因子と2つの新規シス因子を同定し、当初の目的を達成した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J. Hum. Genet.
巻: 58 ページ: 455-460
10.1038/jhg.2013.56
巻: 58 ページ: 446-454
10.1038/jhg.2013.55
http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/labo/epigenome/