研究課題
Girdinファミリー蛋白であるDapleはWntシグナルに重要な役割を果たすDishevelled(Dvl)の結合蛋白として同定されていた。本研究においてわれわれはDapleがnon-canonicalWntシグナルに重要な役割を果たすことを明らかにした。Dapleを過剰発現するとRacの活性が2倍以上に増強するのに対し、RhoおよびCdc42の活性増強は見られなかった。一方、Dapleの発現をsiRNAでノックダウンするとRacの活性のみが減弱し、RhoおよびCdc42の活性は変化しなかった。DapleによるRac活性の制御にはDvlの結合領域であるDapleのC末端ドメインが必須であることを証明した。以上の結果と一致して、Vero線維芽細胞にDapleの全長cDNAあるいはC末端ドメインを発現させるとラメリポディア形成が有意に誘導され、細胞運動能が亢進した。さらに、Wnt5a依存性のRacの活性化にDapleとDvlの結合が重要な役割を果たしていることも明らかにした。つぎにDapleによるRacの活性化がどのようなメカニズムで誘導されるかを解析した。DvlはaPKCと結合し、その活性を増強することが知られている。DapleあるいはDapleのC末端領域を過剰発現させるとDvlとaPKCの結合が有意に増加し、aPKCの活性化を引き起こした。さらにWnt5a依存性にDapleがDvlとaPKCの結合を増強することも確認した。Dapleの過剰発現あるいはWnt5a刺激によるRacの活性化はaPKC阻害剤の処理によりキャンセルされた。以上より、DapleはWntシグナルにおいて、Dvlと相互作用することにより、DvlとaPKCの結合を増強し、aPKC活性化を誘導することが明らかになった。今後Dapleが高発現する神経系における機能についてさらに解析を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は研究計画に記載したGirdinのファミリー蛋白であるDapleの機能解析を進めた結果、DapleがWntシグナルのnon-canonical経路に重要な役割を果たすことを明らかにし、当該分野に研究に進展に大きく貢献できたものと考える。Dapleは神経系に高い発現が見られることから、本研究課題の神経新生における役割について新たな知見が得られる可能性がある。
現在までに神経特異的あるいは血管内皮特異的にGirdinの発現をノックアウトするコンディショナルノックアウトマスの作製に成功しており、このマウスを用いて今後さらにGirdinの神経新生、血管新生における機能を詳細に解析できるものと期待できる。また、すでに作成済みであるGirdinのAktによるリン酸化部位に変異を導入しだマウスを用いて行動解析を行ったところ興味ある知見が得られつつあり、Girdinの精神・神経疾患の病態形成における意義についてもさらに研究を進める予定である。
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