研究課題
寄生虫に感染すると、哺乳動物ではTh2型免疫応答が起こり、IL-5/IL-13の作用で誘導された好酸球が感染防御にあたると報告されてきた。ヒトでも同様で、特に好酸球性肺炎(レフラーの肺好酸球症)が合併することが注目されてきた。しかし、肺炎発症のメカニズムは不明であった。今回の研究で、このメカニズムを解明した。はじめにベネズエラ糞線虫(Strongyloides venezuelensis; S venezuelensis)感染で起こる肺好酸球症の発症にIL-33が重要な役割を果たすことを、IL-33欠損マウスを用いて証明した。次に、肺においてIL-33を発現している細胞がII型肺胞上皮細胞(ATII)であることを証明した。さらに、ベネズエラ糞線虫感染や、本寄生虫の虫体成分であるキチンを経鼻的に肺に投与した場合、ATIIの数やIL-33発現量が増加することを明らかにした。またベネズエラ糞線虫感染前後の肺を比較すると、野生型マウスではIL-5とIL-13を産生するNH細胞が著明に増加しているが、この様な変化はIL-33欠損マウスでは認められないことも明らかにした。最後に、T細胞(Th2細胞)もB細胞も保有しない免疫不全マウス(Rag2欠損マウス)でも、野生型マウスと同様に、ATII細胞数が増加するとともに肺でのIL-33発現量が上昇し、肺内でNH細胞や好酸球数が増加して肺好酸球症を発症することを明らかにした。即ち、寄生虫はその構成成分であるキチンの作用で、肺内でIL-33の産生を誘導する。次に、Th2細胞が誘導されなくても、このIL-33に反応してNH細胞が誘導される。最後に、このIL-33刺激を受けたNH細胞がIL-5とIL-13を産生して肺好酸球症を発症させる。今後は、肺好酸球症の生体防御における役割を明らかにしたい。
1: 当初の計画以上に進展している
II型肺胞上皮細胞がIL-33の産生細胞であることを明らかに出来たから
計画書通りに進めていくが、II型肺胞上皮細胞の活性化機構を研究する。
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