研究課題/領域番号 |
23249025
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高濱 洋介 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 教授 (20183858)
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研究分担者 |
高田 健介 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 講師 (40570073)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 獲得免疫 / Tリンパ球 / レパトア形成 / 胸腺 / 胸腺上皮細胞 |
研究概要 |
本研究は、Tリンパ球のレパトア形成を担う胸腺微小環境の分子本態解明に向けて、(1)皮質と髄質それぞれの胸腺上皮細胞に発現される自己ペプチドの同定、(2)胸腺上皮細胞の亜集団の同定と分化系譜分岐機構の解析、(3)マウス胸腺上皮細胞の解析成果の応用によるヒト胸腺上皮細胞解析技術の開発を目指している。この目的で本年度は、(1)K5D1tg マウスをβ5t 欠損マウスと交配し、β5t 陽性の正常皮質上皮細胞と共にβ5t 欠損の皮質上皮細胞の大量調製を進めることで、β5t 依存的に皮質上皮細胞に発現されるMHC会合自己ペプチドの同定解析を開始した。また、同定されたMHC会合ペプチドを対象に、胎仔胸腺期間培養法等にてTリンパ球レパトア選択能の解析を開始した。(2)胸腺髄質上皮細胞は、皮質で生成された幼若Tリンパ球を誘引して自己抗原を提示することでTリンパ球の自己寛容確立に寄与する。自己抗原提示能の発現に関与する核内因子Aireと、幼若Tリンパ球の誘引に関与するケモカインCCL21をフローサイトメトリにて同時解析する技術を開発し、Aire発現髄質上皮細胞とCCL21発現髄質上皮細胞が異なる細胞集団であること、CCL21発現髄質上皮亜集団はAireおよびサイトカイン受容体Lymphotoxin β receptorに依存することを明らかにした。また、胸腺ナース細胞が皮質上皮細胞の亜集団であり、抗原受容体遺伝子の二次的組換えによるレパトア選択至適化能を持つことを明らかにした。(3)マウスを用いた胸腺上皮細胞の解析成果をヒトの免疫システム理解につなげる目的で、正常マウスから粗精製した皮質上皮細胞と髄質上皮細胞を対象にしたマイクロアレイ解析を通して、ヒトの皮質上皮細胞と髄質上皮細胞はそれぞれCD205とCD86の発現により特異的に検出できることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期間全体の具体的目標のうち、(1)皮質と髄質それぞれの胸腺上皮細胞に発現される自己ペプチドの同定については、巨大な胸腺を有するK5D1tg マウスを用いるとともに、上皮細胞粗精製法を改良することによって、順調に解析を開始することができた。また、(2)胸腺上皮細胞の亜集団の同定と分化系譜分岐機構の解析については、皮質上皮細胞の亜集団としての胸腺ナース細胞の存在と機能を明らかにするとともに、髄質上皮細胞が機能的に異なる亜集団から構成されることを解明することができた。更に、(3)マウス胸腺上皮細胞の解析成果の応用によるヒト胸腺上皮細胞解析技術の開発に向けて、ヒトの皮質上皮細胞と髄質上皮細胞をそれぞれ特異的に検出する細胞表面分子を同定することができた。このように、いずれの具体的目標においても、研究は順調に進展し成果が挙がっている。
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今後の研究の推進方策 |
具体的な研究目標のうち、(1)胸腺上皮細胞に発現される自己ペプチドの同定については、K5D1tg マウスを用いることでMHC会合ペプチド解析を実現しつつあるので、同定されたペプチドを対象にTリンパ球レパトア選択能の解析を進めることによって、胸腺上皮細胞に固有に発現される自己ペプチドの意義を明らかにする。(2)胸腺上皮細胞の亜集団の同定と分化系譜分岐機構の解析については、皮質上皮細胞と髄質上皮細胞いずれにおいても亜集団の存在と機能を明らかにすることができた。今後はこれらの解析を更に進めるとともに、これまでの解析から見いだされた分子を指標に亜集団が形成される分化系譜分岐機構の解析を進める。(3)マウス胸腺上皮細胞の解析成果の応用によるヒト胸腺上皮細胞解析技術の開発に関しては、これまでに見いだした分子マーカーを用いて、ヒト胸腺上皮細胞の分画を試みるとともに、胸腺腫の分類など診断に応用できるか解析を進める。これらの解析を通した本研究の成果は、Tリンパ球レパトアを形成する胸腺微小環境の構築と機能を担う分子本態の解明に寄与し、獲得免疫システムを特徴づける本質の理解に貢献すると期待される。また、Tリンパ球レパトアへの介入による自己免疫疾患の根本的治療法の開発に有用と期待される。
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